会社都合退職で失業保険を受給する場合、自己都合退職と比べて給付制限がなく、最大330日間の給付を受けられるなど大きなメリットがあります。
本記事では、会社都合退職の定義や自己都合退職との違い、受給条件・金額の計算方法、ハローワークでの手続きの流れまで徹底解説します。
会社都合退職とは?自己都合との違いを理解

会社都合退職と自己都合退職の違いを正しく理解することは、失業保険を受給するうえで非常に重要です。退職理由によって給付開始時期や受給日数が大きく変わるため、自分がどちらに該当するのかを把握しておきましょう。
会社都合退職の定義と具体例
会社都合退職とは、労働者の側に原因があるわけではなく、会社の事情によって退職しなければならないケースを指します。つまり、企業側の都合で従業員との雇用契約を終了させることであり、労働者本人の意思に関係なく退職を余儀なくされる状況です。
会社都合退職に該当する具体例は以下のとおりです。
倒産・事業所閉鎖による離職
- 勤務先の倒産によって離職
- 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む)に伴い離職
- 事業所の移転により、通勤することが困難な状況になり離職
解雇・人員整理による離職
- 経営悪化によるリストラや整理解雇
- 勤務先で1か月に30人以上の離職予定の届出がされた、または従業員の3分の1を超える人数が離職したため離職
労働環境の問題による離職
- 労働契約締結時の条件と実態が大きく異なったことが理由の離職
- 賃金の不当なカットや未払いによる離職
- 上司や同僚などからのいじめやハラスメントによる離職
- 慢性的な残業が改善されないことによる離職
重要なポイントとして、退職勧奨やいじめ・嫌がらせ、セクシャルハラスメントなどによる退職は労働者が自らの意思で労働契約の解除を申し出たとしても「会社都合」といえることを覚えておきましょう。
自己都合退職との主な違い
会社都合退職と自己都合退職には、失業保険の受給において大きな違いがあります。
| 項目 | 会社都合退職 | 自己都合退職 |
|---|---|---|
| 給付制限期間 | なし | 1ヶ月(2025年4月以降) |
| 給付日数 | 90〜330日 | 90〜150日 |
| 受給条件 | 6ヶ月以上の加入 | 12ヶ月以上の加入 |
| 待期期間 | 7日間 | 7日間 |
給付開始時期の違い
会社都合退職の場合、7日間の待期期間のみで失業保険の受給が始まります。一方、特定受給資格者または特定理由離職者のいずれにも該当しない場合は、原則として受給資格の決定日から7日間と1ヶ月が経過するまで、雇用保険の基本手当を受給できません。
受給資格の違い
失業給付(基本手当)の受給資格を得るためには、通常、退職前2年間に12ヵ月以上の被保険者期間が必要です。しかし、特定理由離職者に該当する場合、特定受給資格者と同様に退職前1年間に6ヵ月以上あれば受給資格を得られます。
退職金への影響
退職金は、そもそも会社によって制度の有無に違いがありますが、退職金制度がある場合、その金額は勤続年数や退職理由に応じて決まるのが一般的です。例えば、一時金の形で給付されるタイプの場合、自己都合退職では、会社都合退職よりも減額されるケースが多いでしょう。
特定受給資格者として認定されるケース
会社都合退職で失業保険を受給する場合、特定受給資格者とは、「倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者」として認定されます。特定受給資格者に認定されると、失業保険の給付が手厚くなるため、該当するかどうかを確認しておくことが大切です。
倒産等による特定受給資格者の条件
倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者が該当します。また、事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者も含まれます。
解雇等による特定受給資格者の条件
以下のケースが特定受給資格者として認定されます。
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
- 賃金の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと等により離職した者
- 離職の直前3か月間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため離職した者
特定受給資格者のメリット
特定受給資格者および、特定理由離職者の一部は、失業手当の受給資格要件や給付日数などの面で、給付の内容が手厚くなります。具体的には、離職の日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があることが必要となり、一般の離職者(12ヶ月以上)より条件が緩和されています。
また、特定受給資格者及び特定理由離職者に該当する場合は、給付制限期間がなく、待機期間7日間の翌日から給付が開始されるという大きなメリットがあります。
なお、離職理由は、最終的には、会社・退職者双方の事情を聞いてハローワークが判断します。離職票に記載された理由に異議がある場合は、ハローワークの窓口で相談することをおすすめします。
会社都合退職の失業保険|受給条件と期間

会社都合退職の場合、失業保険の受給条件は自己都合退職よりも緩和されています。受給できる期間も長く設定されているため、次の就職先を見つけるまでの生活を安定させやすいのが特徴です。ここでは、具体的な受給条件と給付日数について詳しく解説します。
失業保険を受給するための3つの条件
会社都合退職で失業保険を受給するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1:雇用保険の加入期間を満たしていること
会社都合退職の場合は「1年間に6ヶ月以上」と条件が緩和されます。これは、突然の解雇や倒産により準備期間なく離職を余儀なくされたことへの配慮です。一方、自己都合退職の場合は、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが条件です。
条件2:失業の状態にあること
「失業の状態」にあることが重要です。これは単に仕事に就いていないというだけでなく、積極的に就職活動を行なう意思と能力があることを意味します。
具体的には、以下の状態であることが求められます。
- 就職しようとする積極的な意思があること
- いつでも就職できる能力があること
- 積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にあること
条件3:ハローワークで求職の申し込みを行うこと
失業保険を受給するには、住所地を管轄するハローワークに出向き、求職の申し込みを行う必要があります。失業保険の申請期限は、原則として離職日の翌日から1年以内です。手続きが遅れると受給できる期間が短くなる可能性があるため、退職後はできるだけ早く申請しましょう。
給付日数は最大330日|年齢・勤続年数別の一覧
会社都合退職の場合、失業保険がもらえる日数は最低90日、最大で330日です。これは年齢と雇用保険に加入していた期間によって異なります。
会社都合退職(特定受給資格者)の給付日数一覧
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
自己都合退職の場合は最長で150日、会社都合退職の場合は最長330日と決められています。一般的には勤続年数が長いほど給付日数が多くなる仕組みです。
自己都合退職との給付日数の比較
自己都合退職の場合、年齢に関係なく以下の給付日数となります。
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
例として、29歳までの方が10年以上、20年未満加入していれば180日の給付を受けられます。45歳〜49歳の方に関しては、雇用保険に20年以上加入していれば、330日の給付です。
特に倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた受給資格者(特定受給資格者)については一般の離職者に比べ手厚い給付日数となる場合があります。
自己都合退職より早く受給できる理由
会社都合退職の最大のメリットは、自己都合退職と比べて失業保険を早く受け取れることです。
待期期間と給付制限期間の違い
会社都合退職の場合、労働者側に責任がないケースと認められるため、給付制限期間はなく、7日の待期期間後にすぐに給付が開始されます。
一方、自己都合で退職した場合は、7日間の待機期間に加え、給付制限期間がありました。しかし、2025年4月の改正雇用保険法の施行により、この制限期間が1ヶ月に短縮されました。
| 退職理由 | 待期期間 | 給付制限期間 | 初回給付までの目安 |
|---|---|---|---|
| 会社都合退職 | 7日間 | なし | 約1ヶ月 |
| 自己都合退職 | 7日間 | 1ヶ月(2025年4月以降) | 約2ヶ月 |
給付制限期間がない理由
この制限は、再就職の準備をする時間的余裕がない会社都合の退職者に比べて、自己都合退職者は計画的に準備ができるという考えに基づいています。会社都合退職の場合は、突然の解雇や倒産により再就職の準備ができないまま離職を余儀なくされるため、給付制限期間が設けられていません。
受給開始までの流れ
会社都合退職の場合、7日間の待期期間の翌日から、失業保険の受給期間のカウントが始まります。具体的な流れは以下のとおりです。
- ハローワークで求職の申し込みと離職票の提出
- 受給資格の決定
- 7日間の待期期間
- 雇用保険受給説明会への参加
- 初回の失業認定日(受給資格決定日から約28日後)
- 失業認定日より約1週間以内に初回給付
自己都合退職の場合は失業保険を受けるまでに、7日間の待機期間に加え、1ヵ月間は給付金を受けとることができません。一方、会社都合退職であれば、7日間の待期期間の後、翌日から支給されます。
このように、会社都合退職は受給開始が早いだけでなく、給付日数も長く設定されているため、次の就職先を見つけるまでの生活をしっかりとサポートしてもらえます。退職後はできるだけ早くハローワークで手続きを行い、失業保険を有効に活用しましょう。
会社都合退職の失業保険|金額の計算方法

会社都合退職で受け取れる失業保険の金額は、退職前の給与をもとに計算されます。計算方法を理解しておくことで、退職後の生活設計を立てやすくなります。ここでは、基本手当日額の算出方法から受給総額の目安まで詳しく解説します。
基本手当日額の計算手順
失業保険の金額を計算するには、以下の3つのステップで基本手当日額と受給総額を算出します。
ステップ1:賃金日額を算出する
賃金日額とは、離職日の直近6カ月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額のことです。
計算式 賃金日額 = 退職前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180日
賃金日額を計算する際の「賃金」には、以下のものが含まれます。
- 含まれるもの:基本給、残業代、通勤手当、住宅手当、夜勤手当など
- 含まれないもの:賞与(ボーナス)、退職金、各種祝金
ステップ2:基本手当日額を算出する
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率。基本手当日額は、賃金日額のおよそ50〜80%(60歳〜64歳は45〜80%)となり、賃金の低い方ほど高い率となっています。
ステップ3:受給総額を算出する
計算式 受給総額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
失業保険は4週間ごとに実施される失業認定で支給が決定されるため、原則として28日分ずつ受け取ることになります。1回あたりの受給額は「基本手当日額 × 28日」で計算できます。
賃金日額と給付率の関係
給付率は、賃金日額によって変動する仕組みになっています。給付率は、賃金日額が低い人ほど高く設定される仕組みです。たとえば賃金日額が3,014円程度と低い場合は給付率が80%になりますが、賃金が高い層では50%〜45%程度まで低下します。
給付率の目安(29歳以下〜59歳の場合)
| 賃金日額 | 給付率 |
|---|---|
| 約2,869円〜5,200円未満 | 80% |
| 約5,200円〜12,790円 | 80%〜50%(段階的に低下) |
| 約12,790円超 | 50% |
60歳〜64歳の場合
| 賃金日額 | 給付率 |
|---|---|
| 約2,869円〜5,200円未満 | 80% |
| 約5,200円〜11,490円 | 80%〜45%(段階的に低下) |
| 約11,490円超 | 45% |
給与が高かった人ほど現役時代の手取りと比べて失業保険の金額が少なく感じる傾向にあるため、あらかじめ資金計画を立てておくことが大切です。
なお、給付率に「80%〜50%」と記載されている場合は、「0.8×賃金日額-0.3{(賃金日額-5,340円)÷7,800円}×賃金日額」で基本手当日額を計算します。計算式が複雑なため、正確な金額を知りたい場合はハローワークに確認するか、オンラインの計算ツールを活用することをおすすめします。
年齢別の上限額と受給総額の目安
基本手当日額には年齢ごとに上限額と下限額が設定されています。厚生労働省によると、令和6年度の平均給与額が前年度に比べて上昇したこと、最低賃金の引上げに対応するために、基本手当日額の上限・下限ともに見直されました。
基本手当日額の上限額(2025年8月1日〜)
| 離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 14,510円 | 7,255円 |
| 30歳以上45歳未満 | 16,120円 | 8,055円 |
| 45歳以上60歳未満 | 17,740円 | 8,870円 |
| 60歳以上65歳未満 | 16,940円 | 7,623円 |
基本手当日額の最低額は、旧:2,295円 → 新:2,411円(+116円)に引き上げられました。この下限額は年齢に関係なく全年齢共通です。
受給総額の目安
会社都合退職で失業保険を受給する場合の総額目安を、具体例で計算してみましょう。
例1:35歳、月給30万円、勤続10年の場合
- 賃金日額:30万円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円
- 基本手当日額:約5,848円(給付率約58.5%)
- 所定給付日数:240日(35歳以上45歳未満、10年以上20年未満)
- 受給総額:約140万円
例2:50歳、月給40万円、勤続20年の場合
- 賃金日額:40万円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 13,333円
- 基本手当日額:約6,667円(給付率約50%)
- 所定給付日数:330日(45歳以上60歳未満、20年以上)
- 受給総額:約220万円
例えば、29歳で賃金日額が17,000円の人は、上限額(14,510円)が適用され、2025年8月1日以降分の基本手当日額(1日あたりの支給額)は7,255円となります。
ハローワークでの失業保険手続きの流れ

会社都合退職で失業保険を受給するためには、ハローワークでの手続きが必要です。手続きをスムーズに進めるために、必要書類や手続きの流れ、受給開始までのスケジュールを事前に把握しておきましょう。
申請に必要な書類一覧
住居を管轄するハローワークに行き、「求職の申込み」を行ったのち、「雇用保険被保険者離職票(-1、2)」を提出します。
失業保険の申請に必要な書類は以下のとおりです。
| 書類 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票(1・2) | 退職後10日〜2週間で会社から届く |
| マイナンバー確認書類 | マイナンバーカード、通知カード、または個人番号記載の住民票 |
| 本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど(写真なしは2点必要) |
| 証明写真 | 縦3cm×横2.5cm、正面上半身、2枚(マイナンバーカード提示なら不要) |
| 預金通帳またはキャッシュカード | 本人名義の口座のみ指定可能 |
離職票について
失業保険の申請に必要で、ハローワークに提出することで失業の状態を証明します。離職票には、退職理由や被保険者期間が記載されています。
離職票は、「離職票-1」と「離職票-2」の2枚で1セットです。それぞれ情報が正しく記載されているかをチェックしてください。
本人確認書類の詳細
身元(実在)確認書類として、運転免許証、マイナンバーカードなどの写真付き書類であれば1種類、写真なしの書類の場合は2種類(コピー不可)が必要です。
口座指定の注意点
失業手当の受け取り方法は銀行口座への振込みのため、退職した本人名義の預金通帳やキャッシュカードが必要です。家族名義の口座は指定できないため、本人名義の口座を準備しましょう。また、ネット銀行や外資系金融機関など、一部の金融機関は振込先に指定できないことがあります。
受給資格決定から受給開始までのスケジュール
会社都合退職の場合、給付制限がないため、自己都合退職よりも早く失業保険を受給できます。
手続きの流れ(会社都合退職の場合)
【退職】
↓
【離職票到着】退職後10日〜2週間
↓
【ハローワークで求職申込み・離職票提出】受給資格決定
↓
【待期期間】7日間
↓
【雇用保険受給説明会】受給資格者証・失業認定申告書を受け取る
↓
【初回失業認定日】約4週間後
↓
【初回振込】認定日から約5営業日後
各ステップの詳細
ステップ1:ハローワークで求職申込み
失業保険の申請は、原則として「住民票のある住所を管轄するハローワーク」で行う必要があります。勤務先の最寄りでは申請できないため、転居直後などは特に注意が必要です。
雇用保険の手続きは、月曜日~金曜日(休祝日・年末年始を除く)の8時30分~17時15分です。また、「受給資格決定」の他に「求職の申込み」の手続きもあり、求職申込みには一定の時間がかかること等から、16時前までのご来所をお勧めします。
ステップ2:待期期間(7日間)
求職申込みをした日から7日間は、退職理由に関係なく全員に適用される待期期間です。この期間は失業状態であることを確認するための期間であり、アルバイトなどは控えましょう。
ステップ3:雇用保険受給説明会
受給説明会では、雇用保険の受給について重要な事項の説明を行いますので、説明をよく聞いて、制度を十分理解してください。また、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」をお渡しし、第一回目の「失業認定日」をお知らせします。
ステップ4:初回失業認定日
実際の給付金は、失業の認定を受けた日から5営業日程度で指定の口座に振り込まれます。
会社都合退職の場合のスケジュール例
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 1月1日 | ハローワークで求職申込み・受給資格決定 |
| 1月1日〜7日 | 待期期間(7日間) |
| 1月10日頃 | 雇用保険受給説明会 |
| 1月29日頃 | 初回失業認定日 |
| 2月上旬 | 初回振込 |
失業認定日と求職活動の実績
失業保険を継続して受給するためには、4週間に1度の失業認定日にハローワークを訪れ、求職活動の実績を報告する必要があります。
失業認定日とは
原則として、4週間に1度、失業の認定(失業状態にあることの確認)を行います。指定された日に管轄のハローワークに行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出してください。
求職活動実績の回数
| 認定日 | 会社都合退職 |
|---|---|
| 初回認定日まで | 1回(雇用保険受給説明会参加でクリア) |
| 2回目以降の認定日 | 2回以上 |
会社都合で離職した人の場合は、初回の認定日までなら求職活動が1回で済みます。雇用保険受給説明会への参加が1回としてカウントされるため、会社都合退職であれば、実質、初回は求職活動なしで認定を受けられるといえるでしょう。
求職活動として認められるもの
求職活動の範囲(主なもの)は、ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習、セミナーの受講などです。単なる、ハローワーク、新聞、インターネットなどでの求人情報の閲覧、単なる知人への紹介依頼だけでは、この求職活動の範囲には含まれません。
具体的に認められる活動は以下のとおりです。
- ハローワークでの職業相談・職業紹介
- ハローワーク主催のセミナー・講習会への参加
- 転職エージェントとの面談・相談
- 求人への応募(書類選考で不採用でも実績になる)
- 企業説明会への参加
- 国家資格や検定試験の受験
失業認定申告書の記入
認定日に提出する「失業認定申告書」には、活動した日と活動内容を記入します。求人応募、職業相談、セミナー参加など、どの活動をしたかを正確に書くことが大切です。
求職活動実績が足りない場合
認定日までに規定の数の求職活動実績を用意できないと、失業認定が不認定になり、その月の失業手当が支払われなくなります。ただし、次の認定日にきちんと求職活動実績を用意していれば、そのタイミングから支給は再開し、不認定によって毎月の支給額が減ることもありません。
失業認定日は変更できないため、余裕を持って求職活動を行い、認定日の前日までに必要な回数を満たしておくことが大切です。
自己都合を会社都合に変更できるケース

離職票に「自己都合退職」と記載されていても、実態が会社都合に該当する場合は、ハローワークで退職理由を変更できる可能性があります。退職理由が変更されれば、給付制限期間がなくなり、給付日数も増えるなど、失業保険の受給条件が大きく改善されます。ここでは、変更が認められる条件と具体的な手続き方法を解説します。
ハローワークで変更が認められる条件
失業保険の受給手続きを行うにあたって「会社都合退職」になるプロセスは2通りあり、退職後に自ら労働者本人が自ら手続きを踏んで「会社都合退職」と認められるケースがあります。労働条件やハラスメントが原因の退職場合、退職時に自己都合として扱われても、ハローワークで手続きを行えば会社都合に変更されることがあります。
以下のような条件に該当する場合、自己都合退職から会社都合退職(特定受給資格者)への変更が認められる可能性があります。
労働条件に関する問題
- 採用時に提示された労働条件(賃金、労働時間、勤務地、職種など)と実際の条件が大きく異なっていた場合
- 賃金が一定以上、例えば、残業手当を除いた給料がそれまでの85%未満に低下した場合
- 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が2ヶ月以上続いた場合
長時間労働による退職
認定基準の中には、離職前6か月間のうち、いずれか連続する3か月で45時間の残業、もしくはいずれか1か月に100時間以上の残業、またはいずれか連続する2か月以上を平均して1か月80時間を超える残業があり離職した場合が含まれています。
ハラスメントによる退職
上司・同僚などからパワハラや嫌がらせを受けた場合、セクハラの事実を知りながら雇用管理上の措置を講じなかったことにより退職した場合も認定基準として含まれています。
その他の条件
- 事業所の移転により通勤が困難になった場合
- 退職勧奨を受けて退職した場合
- 有期雇用契約の更新を希望したにもかかわらず更新されなかった場合
自己都合と会社都合は、客観的な事情から総合的に判断し、最終的にはハローワークが決定します。
変更申請に必要な証拠書類
自己都合退職した後、会社都合にしてもらうには、会社都合退職に該当する証拠をハローワークに提出して「会社都合に値する正当な理由があった」ことを認定してもらうことが必要です。
有利な証拠があれば、ハローワークの職員は迅速に動いてくれます。そのうえ、会社都合退職に判定してもらえるように有利に働きます。
退職理由別の必要書類
| 退職理由 | 必要な証拠書類 |
|---|---|
| 長時間労働 | タイムカード、勤怠記録、残業時間の記録、手帳やカレンダーの予定表 |
| 労働条件の相違 | 雇用契約書、求人票、労働条件通知書、給与明細 |
| 賃金未払い・減額 | 給与明細、賃金台帳、銀行口座の入金記録 |
| パワハラ・セクハラ | 録音データ、メールやチャットの記録、医師の診断書、同僚の証言書 |
| 退職勧奨 | 退職勧奨の記録(メール、録音)、会社との面談記録 |
パワハラの場合の証拠について
ハローワークは、パワハラを受けて退職したとして、特定受給資格者に該当するかを判断するにあたり、パワハラの事実を証言してくれる証言者が2人以上いれば、特定受給資格者と認定してくれるようです。
特定受給資格者を申請するには、以下の証拠が有力になります。医師の診断書(ストレスによる体調不良など)、会社の相談記録(人事・労務部門への報告)、労働基準監督署への相談履歴などです。
ハローワークは客観的証拠として、労働契約書や就業規則、タイムカード、賃金台帳などの書類を見て実情を判断するので、退職理由の変更を相談するつもりの人は、退職前にどのような書類が必要になるか確認しておきましょう。
異議申し立ての具体的な手順
自己都合退職を会社都合退職に変更してもらう最終手段が、ハローワークにおける異議申立ての手続きです。自己都合退職という処理に納得がいかないときは、ハローワークに相談してください。
手順1:離職票の内容を確認する
会社から届いた離職票の退職理由欄を確認します。離職票の発行は、会社の協力のもとに行われます。具体的には、会社が離職票に、退職理由を記載して労働者のサインを得て、ハローワークに提出します。退職理由に異議がある場合は、署名する際に「異議あり」と記載しておきましょう。
手順2:ハローワークで相談する
離職票と証拠書類を持参して、ハローワークの窓口で退職理由の変更について相談します。退職理由の変更を希望していることと、会社都合に該当すると考える理由を伝えましょう。
手順3:証拠書類を提出する
ハローワークの担当者に、退職理由を裏付ける証拠書類を提出します。ハローワークに異議を述べる場合にも、自己都合退職ではなく、会社都合退職であることを証明する証拠が不可欠です。例えば、労働条件が大幅に変更されたことを示す書類や、ハラスメントを記録したメールや録音、メモなどが証拠として役立ちます。
手順4:ハローワークによる調査
証拠が認められると、ハローワークの職員は会社に直接連絡を取って、事実確認をします。会社と退職者双方の主張を聴取し、提出された証拠をもとに判断が行われます。
手順5:最終判断の通知
ハローワークが調査結果をもとに最終的な退職理由を判断します。会社都合退職と認められた場合は、離職理由が変更され、給付制限期間なしで失業保険を受給できるようになります。
異議申し立ての注意点
ハローワークに対して退職理由などについて異議を申し出ることで、自己都合退職ではなく会社都合退職に変更されることもあります。ただし、その際は主張を裏付ける資料などが必要となるため、自力で対応できるか不安な場合は弁護士に相談してください。
既に自己都合の退職届を提出してしまっている場合には、ハローワークや弁護士に相談することをおすすめします。会社から自己都合を強要された、圧力をかけられたという場合は違法となる可能性もあります。
退職理由の変更は簡単ではありませんが、正当な理由と証拠があれば認められる可能性があります。退職を検討している段階から証拠を集め始め、退職後はできるだけ早くハローワークに相談することをおすすめします。
会社都合退職の失業保険|注意点とデメリット

会社都合退職は失業保険の面で多くのメリットがありますが、注意すべき点やデメリットも存在します。転職活動への影響、受給中のアルバイトルール、そして早期再就職時にもらえる再就職手当について正しく理解しておきましょう。
転職活動への影響と対策
会社都合退職は転職活動において必ずしも不利になるわけではありませんが、状況によっては採用担当者に懸念を抱かれる可能性があります。
転職活動への影響
会社都合退職によって転職活動が不利になることは、あまり多くありません。会社都合退職の理由として挙げられるのは、主に「倒産」や「早期退職」など。退職理由が企業側にあることが明確に分かれば、転職時に大きな影響はないでしょう。
ただし、書類に「会社都合退職」の明記があると、選考の段階で不利になってしまう場合もあります。通常、よほどの事情がなければ会社側から労働者を辞めさせることはありません。それは労働者が優秀な人材であるほど顕著です。しかし、そうでありながら会社都合で退職したということは、「マイナスな要因で会社から解雇された人間なのかもしれない」と人事担当者に疑念を持たれてしまう恐れがあります。
退職理由による印象の違い
| 退職理由 | 転職への影響 |
|---|---|
| 会社の倒産・事業縮小 | ほぼ影響なし |
| 早期退職制度の利用 | ほぼ影響なし |
| 退職勧奨 | 理由を深く聞かれる可能性あり |
| 能力不足による解雇 | 慎重に判断される傾向あり |
会社の倒産などにより「整理解雇」されたケースなど、本人にはほぼ非がない場合、「会社都合退職」がマイナス評価されることはありません。正直に伝えれば、「それは仕方がない」「この人は運が悪かった」などと思われるでしょう。
転職活動での対策
大切なのは、面接などで退職理由を説明する際に、他責にしたりネガティブな印象を与えたりせず、事実を客観的かつ前向きに伝えることです。
具体的には以下の点を意識しましょう。
- 退職理由を簡潔かつ正直に説明する
- 前職の批判や愚痴は避ける
- 経験から学んだことや今後の意欲を前向きに伝える
- 転職活動では、基本的に個々のもつスキルや前職での実績、経験などが重視されます
受給中のアルバイトのルール
失業保険は、失業後に次の就職が見つかるまでに安心して生活ができるように支給される給付金です。失業後にもらえる給付金なので受給期間はアルバイトができないと思われる方がいますが、実際はルールを守ればアルバイトや派遣社員として働くことができます。
アルバイトの基本ルール
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 週の労働時間 | 20時間未満に抑える |
| 雇用契約期間 | 31日未満にする |
| 待期期間中 | アルバイト不可 |
| 申告義務 | 必ずハローワークに申告する |
1週間の所定労働時間が20時間以上でかつ31日以上の雇用が見込まれる場合は「就職した」と見なされ、失業手当の受給資格を失うため注意が必要です。
待期期間中の注意点
待機期間とは、離職の理由に関係なく、失業保険を申請した人に対して一律で適用される失業保険の受給が制限される期間です。離職の手続きを行って失業保険の受給資格を得てから、7日間が待機期間に該当します。この待機期間にアルバイトを行ってしまうと、受給の期間が遅くなる危険性があるので、注意が必要です。
1日の労働時間による影響
1日に4時間以上働いた日は失業保険が支給されず、その代わりにアルバイトをした日の失業保険は最終支給日の1日あとに繰り越されることになります。
- 4時間以上働いた日:その日の失業保険は不支給(後日に繰り越し)
- 4時間未満働いた日:収入額によって減額される可能性あり
申告義務について
失業手当を受給するためには、4週間に1回の失業認定日に求職活動やアルバイトの内容を申告する必要があります。正しく申告をしないと、不正受給と見なされる可能性があるため注意が必要です。
アルバイトや内職、知人の手伝いなどで賃金が発生したら、必ずハローワークへ申告してください。この申告をしないと、不正受給と判断されてペナルティを課する事態になってしまいます。
再就職手当を受け取る方法
再就職手当は、失業保険の受給資格がある人が早期に再就職した場合に支給される一時金です。会社都合退職の場合、自己都合退職よりも受給しやすい条件が設定されています。
再就職手当の受給条件
会社都合により離職となった場合は、給付制限がないため、雇用保険受給資格が決定した日から7日(待期期間)より後に再就職すると、ハローワークまたは職業紹介事業者以外の紹介でも再就職手当を受給できます。例えば、知人紹介や転職サイトの求人を見て応募したなどの方法でも受け取れます。
主な受給条件は以下のとおりです。
- 7日間の待期期間満了後に就職している
- 失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
- 1年以上継続して雇用される見込みがある
- 離職前の会社やその関連会社への再就職ではない
- 過去3年以内に再就職手当を受給していない
支給額の計算方法
再就職手当は、「基本手当日額×支給残日数×支給率」で算出されます。
基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合の支給率は60%、3分の2以上を残した場合の支給率は70%です。
| 支給残日数 | 支給率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 60% |
| 3分の1未満 | 受給不可 |
具体的な計算例
所定給付日数180日、基本手当日額6,000円の場合
- 支給残日数120日以上(3分の2以上)で再就職 120日 × 6,000円 × 70% = 504,000円
- 支給残日数60日以上(3分の1以上)で再就職 60日 × 6,000円 × 60% = 216,000円
基本手当日額には上限が定められており、2025年5月時点の上限は6,395円(60歳以上65歳未満は5,170円)となっています。
申請の流れ
- 再就職先から「採用証明書」を記入してもらう
- ハローワークに採用証明書を提出する
- 「再就職手当支給申請書」を受け取る
- 再就職先に申請書の必要事項を記入してもらう
- 就職日から1ヶ月以内にハローワークに提出する
- 申請から約1ヶ月半〜2ヶ月後に支給される
早期に再就職するほど支給率が高くなるため、失業保険を満額受給するよりも、再就職手当と合わせた総額が多くなるケースもあります。積極的に転職活動を進めながら、再就職手当の活用も検討してみてください。
まとめ:会社都合退職の失業保険を正しく受給しよう

会社都合退職で失業保険を受給する際のポイントを振り返りましょう。
会社都合退職は突然の出来事で不安も大きいですが、失業保険制度を正しく活用すれば、次のキャリアに向けた準備期間を安心して過ごせます。わからないことがあれば、遠慮なくハローワークの窓口で相談してください。
