本記事では、傷病手当金の支給期間の計算方法や待期期間の考え方、支給が終了する条件、期間終了後に利用できる制度まで詳しく解説します。申請漏れや時効による損失を防ぐためにも、ぜひ最後までご覧ください。
傷病手当金の支給期間は最長1年6ヶ月

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けなくなった際に、健康保険から支給される給付金です。会社員や公務員など、健康保険に加入している方の生活を支える重要な制度として、多くの方に活用されています。
傷病手当金の支給期間には上限が設けられており、最長で1年6ヶ月間受給することができます。ただし、この期間は単純に「支給開始日から1年6ヶ月後まで」というわけではありません。2022年の法改正により、支給期間の考え方が大きく変わりました。
ここでは、傷病手当金の支給期間について、計算方法や起算日の考え方を詳しく解説します。
支給開始日から通算1年6ヶ月が上限
傷病手当金は、同一の病気やケガに対して、支給開始日から通算して1年6ヶ月分を受給できます。この「通算1年6ヶ月」とは、実際に傷病手当金が支給された日数を合計して1年6ヶ月(約549日)に達するまでという意味です。
具体的な支給日数は、支給開始日を起点に暦に従って1年6ヶ月後の日付を算出し、その期間内の日数で決まります。たとえば、2024年3月4日が支給開始日の場合、1年6ヶ月後は2025年9月3日となり、この期間の日数である549日が最大支給日数となります。
なお、支給開始日によって1年6ヶ月間に含まれる暦日数は異なるため、支給日数には若干の差が生じることがあります。これは、月によって日数が28日〜31日と異なること、うるう年の影響などが理由です。
支給期間の起算日はいつから?
傷病手当金の支給期間は、「支給が開始された日」から起算します。ここで重要なのは、3日間の待期期間は起算日に含まれないという点です。
傷病手当金を受給するには、病気やケガで仕事を休んだ日から連続して3日間の「待期期間」を経る必要があります。この待期期間を経た4日目以降で、実際に傷病手当金が支給される最初の日が「支給開始日」となります。
起算日の具体例
| ケース | 状況 | 起算日 |
|---|---|---|
| ケース1 | 待期期間3日後、4日目以降も労務不能 | 4日目 |
| ケース2 | 待期期間3日後、4日目は出勤し5日目から労務不能 | 5日目 |
| ケース3 | 待期期間3日後、4日目は有給休暇を取得 | 5日目(有給取得日は支給されないため) |
待期期間には、土日祝日などの公休日や有給休暇取得日も含まれます。たとえば、金曜日から体調を崩して休み始めた場合、金・土・日の3日間で待期期間が完成し、月曜日から傷病手当金が支給されます。
また、待期期間は「連続した3日間」であることが条件です。2日休んで1日出勤し、また休むというパターンでは待期期間は完成しません。連続して3日以上休むことで、初めて4日目以降の傷病手当金受給資格が発生します。
傷病手当金の支給期間の計算方法

傷病手当金を正しく受給するためには、支給期間の計算方法を理解しておくことが重要です。計算を誤ると、本来受け取れるはずの金額をもらい損ねてしまう可能性があります。
支給期間の計算には、待期期間の考え方、支給日数のカウント方法、土日祝日の扱いなど、いくつかのルールがあります。ここでは、それぞれのポイントを具体例とともに詳しく解説します。
待期期間3日間の考え方
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み始めてもすぐには支給されません。支給開始前に「待期期間」と呼ばれる3日間の待機が必要です。
待期期間とは、業務外の病気やケガで療養するために、連続して3日間仕事を休んだ期間のことです。この3日間を経過した後、4日目以降の労務不能日に対して傷病手当金が支給されます。
待期期間のポイント
- 必ず「連続した3日間」であること
- 土日祝日などの公休日も待期期間に含められる
- 有給休暇を取得した日も待期期間に含められる
- 待期期間中は傷病手当金の支給対象外
待期期間が完成するケース
| パターン | 月 | 火 | 水 | 木 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| パターン1 | 欠勤 | 欠勤 | 欠勤 | 欠勤 | 水曜で待期完成、木曜から支給 |
| パターン2 | 欠勤 | 欠勤 | 欠勤 | 出勤 | 水曜で待期完成、次の欠勤日から支給 |
| パターン3 | 有給 | 有給 | 有給 | 欠勤 | 水曜で待期完成、木曜から支給 |
待期期間が完成しないケース
| パターン | 月 | 火 | 水 | 木 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| パターン4 | 欠勤 | 欠勤 | 出勤 | 欠勤 | 連続3日間でないため待期未完成 |
| パターン5 | 欠勤 | 出勤 | 欠勤 | 出勤 | 連続3日間でないため待期未完成 |
待期期間で最も重要なのは「連続していること」です。2日休んで1日出勤し、また休むというパターンでは待期期間は完成しません。体調が悪い状態で無理に出勤してしまうと、待期期間のカウントがリセットされてしまうため注意が必要です。
支給日数のカウント方法
2022年1月の法改正により、傷病手当金の支給日数は「通算」でカウントされるようになりました。支給開始日から暦に従って1年6ヶ月を計算し、その期間内の日数が最大支給日数となります。
支給日数の基本的な計算手順
- 待期期間(連続3日間)の完成を確認
- 4日目を「支給開始日」として特定
- 支給開始日から1年6ヶ月後の日付を算出
- その期間の暦日数が「最大支給日数」となる
たとえば、2024年4月1日が支給開始日の場合、1年6ヶ月後は2025年9月30日です。この期間の日数は549日となり、これが最大支給日数です。
カウントされるもの・されないもの
| 項目 | カウント |
|---|---|
| 実際に傷病手当金が支給された日 | される |
| 復職して働いた期間 | されない |
| 給与が支払われ傷病手当金が不支給となった日 | されない |
| 年金との調整で全額不支給となった日 | されない |
| 年金との調整で一部でも支給された日 | される |
支給されなかった期間はカウントから除外されるため、途中で復職期間を挟んでも、合計で最大1年6ヶ月分の傷病手当金を受給できます。
土日祝日は支給期間に含まれる?
結論から言うと、傷病手当金は土日祝日も支給対象となります。支給期間や支給日数は「暦日」ベースで計算されるため、会社の営業日や出勤日数ではなく、カレンダー上の日数で考えます。
土日祝日の扱いに関するポイント
- 待期期間:土日祝日も含めてカウントできる
- 支給期間:土日祝日も1年6ヶ月の期間に含まれる
- 支給日数:労務不能であれば土日祝日も支給対象
たとえば、金曜日から体調を崩して休み始めた場合を考えてみましょう。
| 金 | 土 | 日 | 月 |
|---|---|---|---|
| 欠勤(待期1日目) | 公休(待期2日目) | 公休(待期3日目) | 欠勤(支給開始) |
この場合、土日も待期期間に含まれるため、日曜日で待期期間が完成します。月曜日以降も労務不能であれば、月曜日から傷病手当金が支給されます。
また、傷病手当金を受給中の土日についても、療養のために労務不能な状態が続いていれば支給対象です。会社の休日だからといって支給が止まるわけではありません。
申請時の注意点
傷病手当金の申請書には、土日祝日も含めた期間を記入します。「会社の出勤日だけを書けばいい」と誤解して土日を除外してしまうと、本来もらえる金額が減ってしまいます。必ず暦日どおりに申請期間を記入しましょう。
具体的な計算シミュレーション
実際の計算例を見ながら、傷病手当金の支給期間・支給日数を確認していきましょう。
【ケース1】連続して休職した場合
- 労務不能開始日:2024年4月1日(月曜日)
- 待期期間:4月1日〜4月3日(3日間)
- 支給開始日:4月4日
- 支給満了日:2025年10月3日(1年6ヶ月後)
- 最大支給日数:549日
このケースでは、4月4日から2025年10月3日までの549日間が支給対象期間となります。途中で復職せずに継続して休職した場合、549日分の傷病手当金を受給できます。
【ケース2】途中で復職した場合(通算化の例)
- 支給開始日:2024年4月4日
- 第1回休職:4月4日〜6月30日(88日間支給)
- 復職期間:7月1日〜12月31日(6ヶ月間・カウント対象外)
- 第2回休職:2025年1月1日〜
この場合、復職していた6ヶ月間は支給日数にカウントされません。最大支給日数549日から第1回休職の88日を差し引いた461日が、第2回休職以降で受給可能な残り日数となります。
【ケース3】支給日数の残りを確認する計算
- 支給開始日:2024年4月4日
- 最大支給日数:549日
- これまでの支給日数:200日
- 残りの支給日数:549日 − 200日 = 349日
通算化により、支給開始日から何日が経過していても、実際に支給された日数が549日に達するまで受給を続けられます。
【注意】支給満了日の考え方
支給満了日は「支給開始日から1年6ヶ月後」ですが、通算化により、この日を過ぎても支給日数が残っていれば引き続き受給できます。たとえば、支給開始日から1年6ヶ月の期間中に100日間復職していた場合、支給満了日を過ぎてもさらに100日分の傷病手当金を受給可能です。
傷病手当金の支給期間が延長されるケース

傷病手当金の支給期間は原則として通算1年6ヶ月が上限です。しかし、特定の条件を満たす場合には、実質的に支給期間が延びるケースがあります。
2022年の法改正により支給期間が「通算化」されたことで、途中で復職した期間は支給日数にカウントされなくなりました。これは厳密には「延長」ではなく「計算方法の変更」ですが、結果として以前より長い期間にわたって受給できるようになっています。
ここでは、傷病手当金の支給期間が実質的に延長されるケースと、延長が認められないケースについて解説します。
同一傷病で復職後に再発した場合
同じ病気やケガで一度復職した後に再発した場合、支給開始日から通算1年6ヶ月の範囲内であれば、傷病手当金を再度受給できます。
2022年法改正後のメリット
改正前は、復職して働いていた期間も含めて「支給開始日から1年6ヶ月」が上限でした。そのため、途中で復職期間があると、実際に受給できる日数が大幅に減ってしまうケースがありました。
改正後は、復職していた期間は支給日数にカウントされません。たとえば、最初に6ヶ月間受給した後に1年間復職し、その後再発した場合でも、残り1年分の傷病手当金を受給できます。
再発時の申請ポイント
- 新たな待期期間(3日間)は不要
- 医師の診断書と会社の証明書が必要
- 前回の支給日数と合算して1年6ヶ月が上限
ただし、注意が必要なのは「社会的治癒」の考え方です。一度治癒したと認められ、相当期間(一般的に数年程度)にわたって症状なく就労した後に再発した場合は、「別の傷病」として扱われることがあります。この場合、新たに1年6ヶ月の支給期間が発生する可能性があります。
社会的治癒の判断は、以下の要素を総合的に考慮して保険者(協会けんぽや健康保険組合)が行います。
- 前回の受給終了時の症状
- その後の症状経過
- 就業状況や就業期間
- 医師の意見
別の傷病で新たに申請する場合
傷病手当金は「同一の傷病」に対して通算1年6ヶ月が上限です。つまり、まったく別の病気やケガで労務不能になった場合は、新たに1年6ヶ月の支給期間が発生します。
別傷病として認められるケース
| 1回目の傷病 | 2回目の傷病 | 判定 |
|---|---|---|
| うつ病 | 骨折(交通事故) | 別傷病として認定 |
| 胃がん | 肺炎 | 別傷病として認定 |
| 腰痛 | 心筋梗塞 | 別傷病として認定 |
このように、原因や発症部位が明らかに異なる場合は、それぞれ独立した傷病として扱われ、各傷病につき最長1年6ヶ月の傷病手当金を受給できます。
注意:重複期間の取り扱い
ただし、2つの傷病の療養期間が重なっている場合、傷病手当金は二重には支給されません。たとえば、傷病Aで受給中に傷病Bも発症した場合、重複する期間については1つの傷病手当金のみが支給されます。
傷病Aが治癒して傷病Bのみで療養を続ける場合は、傷病Bの支給期間(1年6ヶ月)から重複期間を差し引いた残りの期間について受給を続けることができます。
同一傷病と判断されるケース
病名が異なっていても、実質的に同一の傷病と判断される場合があります。
- うつ病 → 適応障害(精神疾患として関連性あり)
- 腰椎椎間板ヘルニア → 坐骨神経痛(原因が同じ)
- 大腸がん → 大腸がん転移(同一疾患の進行)
このような場合は、医師の診断書や保険者の審査により、同一傷病として扱われる可能性が高くなります。判断に迷う場合は、事前に健康保険組合や協会けんぽに相談することをおすすめします。
延長が認められないケースとは
傷病手当金の支給期間は、どのような事情があっても1年6ヶ月を超えて延長されることはありません。以下のケースでは、支給期間の延長は認められないため注意が必要です。
延長が認められないケース一覧
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 同一傷病で通算1年6ヶ月を受給済み | 法定の上限に達しているため |
| 療養を継続していても症状が改善しない | 支給期間は療養の長さに連動しない |
| 退職後に傷病が長引いている | 在職時の支給開始日から通算1年6ヶ月が上限 |
| 医師が労務不能と認めなくなった | 支給要件を満たさなくなるため |
傷病手当金の支給期間が終了する条件

傷病手当金は、病気やケガで働けない期間の生活を支える重要な制度ですが、無期限に受給できるわけではありません。支給期間には明確な終了条件が定められています。
支給が終了する主なケースとしては、法定の支給期間である1年6ヶ月に達した場合、退職して被保険者資格を喪失した場合、他の年金制度との調整が行われる場合などがあります。
ここでは、傷病手当金の支給期間が終了する条件について詳しく解説します。事前に終了条件を把握しておくことで、支給終了後の生活設計にも備えることができます。
1年6ヶ月を経過した場合
傷病手当金の支給期間は、同一の傷病について支給開始日から通算して1年6ヶ月が上限です。この期間を経過すると、たとえ病気やケガが治っていなくても、原則として傷病手当金は支給されなくなります。
通算1年6ヶ月の考え方
2022年1月の法改正により、支給期間は「通算」でカウントされるようになりました。そのため、途中で復職した期間があれば、その分だけ支給満了日が後ろにずれます。
| 項目 | 改正前(2021年12月以前) | 改正後(2022年1月以降) |
|---|---|---|
| カウント方法 | 暦日で1年6ヶ月 | 通算で1年6ヶ月 |
| 復職期間の扱い | 支給期間に含まれる | 支給期間に含まれない |
| 最大受給可能期間 | 支給開始から1年6ヶ月間 | 支給日数が1年6ヶ月分に達するまで |
具体例:通算化による支給満了日の違い
支給開始日が2024年4月1日、途中で6ヶ月間復職した場合を考えてみましょう。
- 改正前のルール:2025年9月30日で支給満了(復職期間も含む)
- 改正後のルール:2026年3月31日まで支給可能(復職期間は除外)
このように、通算化によって実質的な受給可能期間が延びる場合があります。ただし、支給される総日数(約549日)は変わりません。
支給期間満了時の対応
支給期間が満了に近づいたら、以下の準備を進めておくことが重要です。
- 残りの支給日数を健康保険組合や協会けんぽに確認する
- 障害年金の受給要件を満たすか検討する
- 復職の可能性について医師や会社と相談する
- 生活費の見通しを立てる
退職・資格喪失した場合の継続給付
会社を退職して健康保険の被保険者資格を喪失した場合でも、一定の条件を満たせば傷病手当金を継続して受給できます。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。
継続給付の要件
以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 被保険者期間が1年以上あること 資格喪失日の前日(退職日)までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。任意継続被保険者期間や国民健康保険の期間は含まれません。
- 退職日に傷病手当金を受給中または受給できる状態にあること 退職日時点で傷病手当金の支給を受けているか、支給を受けられる状態(待期期間完成済みで労務不能)であること。
- 退職日に出勤していないこと 退職日当日に出勤扱いになると、継続給付の要件を満たさなくなります。退職日は必ず休むようにしましょう。
- 退職後も継続して労務不能であること 退職後に一度でも働ける状態になると、継続給付は打ち切られます。その後再び同じ傷病で働けなくなっても、継続給付は再開されません。
継続給付で注意すべきポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給期間 | 在職時の支給開始日から通算1年6ヶ月が上限(延長なし) |
| 申請先 | 退職前に加入していた健康保険組合または協会けんぽ |
| 国民健康保険との関係 | 退職後に国保に加入しても、傷病手当金は退職前の健保から支給 |
| 任意継続との関係 | 任意継続被保険者になっても、継続給付は退職前の資格に基づく |
継続給付が打ち切られるケース
- 支給開始日から通算1年6ヶ月が経過した
- 労務可能な状態に回復した(一度でも働ける状態になった)
- 老齢年金を受給し始めた(調整あり)
- 死亡した
退職後の継続給付を受ける予定がある場合は、退職日の設定や退職日当日の過ごし方に十分注意してください。
老齢年金・障害年金との調整
傷病手当金を受給中に年金(老齢年金・障害年金)を受け取る場合、両方を満額受給することはできません。「併給調整」が行われ、傷病手当金が減額または不支給となります。
障害年金との調整
傷病手当金と同一の傷病を原因とする障害厚生年金または障害基礎年金を受給する場合、傷病手当金は原則として支給停止となります。
ただし、障害年金の日額が傷病手当金の日額より低い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
| 比較 | 結果 |
|---|---|
| 障害年金の日額 ≧ 傷病手当金の日額 | 傷病手当金は不支給 |
| 障害年金の日額 < 傷病手当金の日額 | 差額が傷病手当金として支給 |
障害年金の日額の計算方法
障害年金の年額 ÷ 360日 = 障害年金の日額
たとえば、障害厚生年金の年額が100万円の場合、日額は約2,778円となります。傷病手当金の日額が6,000円であれば、差額の約3,222円が傷病手当金として支給されます。
老齢年金との調整(退職後のみ)
在職中は老齢年金との調整は行われませんが、退職後の継続給付を受けている場合は調整の対象となります。
老齢厚生年金や老齢基礎年金、退職共済年金を受給している場合、傷病手当金は原則として支給停止となります。障害年金と同様に、年金の日額が傷病手当金の日額より低い場合は差額が支給されます。
調整が行われる年金の種類
| 年金の種類 | 在職中 | 退職後(継続給付) |
|---|---|---|
| 障害厚生年金・障害基礎年金 | 調整あり | 調整あり |
| 老齢厚生年金・老齢基礎年金 | 調整なし | 調整あり |
| 退職共済年金 | 調整なし | 調整あり |
| 遺族年金 | 調整なし | 調整なし |
障害手当金(一時金)との調整
障害厚生年金の障害等級に該当しない軽度の障害の場合、「障害手当金」という一時金が支給されることがあります。この障害手当金を受給した場合、傷病手当金は障害手当金の額に達するまで支給停止となります。
たとえば、障害手当金として100万円を受給した場合、傷病手当金の累計額が100万円に達するまでは傷病手当金が支給されません。100万円を超えた時点から、傷病手当金の支給が再開されます。
年金受給開始前に確認すべきこと
- 傷病手当金と年金の日額を比較し、どちらが有利か検討する
- 障害年金の申請タイミングを計画的に決める
- 年金事務所や健康保険組合に併給調整の詳細を確認する
傷病手当金の支給期間が残っている場合でも、障害年金を受給し始めると調整が発生します。どちらの制度を優先するか、受給額や将来の生活設計を踏まえて慎重に判断しましょう。
傷病手当金の期間終了後に利用できる制度

傷病手当金の支給期間が満了しても、病気やケガが完治せず働けない状態が続くケースは少なくありません。特に、がんや精神疾患、難病などの慢性的な疾患では、療養が長期化することがあります。
傷病手当金の支給が終了した後も、一定の条件を満たせば利用できる公的支援制度があります。支給期間満了前から次の制度への移行を検討し、収入が途切れないよう準備しておくことが重要です。
ここでは、傷病手当金の期間終了後に利用できる主な制度について解説します。
障害年金への切り替えを検討
傷病手当金の支給期間が終了しても働けない状態が続く場合、最も有力な選択肢となるのが「障害年金」です。障害年金は、病気やケガによって生活や仕事が制限される場合に支給される年金制度で、傷病手当金とは異なり支給期間に上限がありません。
障害年金の種類
| 種類 | 対象者 | 支給要件 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 | 国民年金加入者 | 障害等級1級または2級に該当 |
| 障害厚生年金 | 厚生年金加入者 | 障害等級1級〜3級に該当 |
| 障害手当金 | 厚生年金加入者 | 3級より軽度の障害(一時金) |
会社員として働いていた方は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給できる可能性があります。
障害年金の受給要件
障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 初診日要件 障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金の被保険者であること。
- 保険料納付要件 初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。または、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がないこと。
- 障害状態要件 障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日、または症状固定日)において、障害等級に該当する状態であること。
傷病手当金から障害年金への移行タイミング
傷病手当金の支給期間満了を待たずに、早めに障害年金の申請準備を始めることをおすすめします。理由は以下の通りです。
- 障害年金の審査には通常3〜4ヶ月かかる
- 書類の準備に時間がかかることがある
- 初診日から1年6ヶ月経過後に申請可能(障害認定日請求)
傷病手当金と障害年金は同時に受給することも可能ですが、併給調整が行われます。障害年金の日額が傷病手当金の日額を下回る場合は、差額が傷病手当金として支給されます。
障害年金の申請先と相談窓口
- 障害基礎年金:お住まいの市区町村の国民年金窓口
- 障害厚生年金:お近くの年金事務所
- 相談窓口:年金事務所、街角の年金相談センター
申請手続きは複雑なため、社会保険労務士に相談することも検討してみてください。
雇用保険の傷病手当との違い
「傷病手当」という名称の制度は、健康保険と雇用保険の両方に存在します。傷病手当金の支給期間が終了した後、失業中に病気やケガをした場合は、雇用保険の「傷病手当」を受給できる可能性があります。
健康保険の傷病手当金と雇用保険の傷病手当の違い
| 項目 | 健康保険の傷病手当金 | 雇用保険の傷病手当 |
|---|---|---|
| 対象者 | 健康保険の被保険者 | 雇用保険の受給資格者 |
| 支給場面 | 在職中(退職後継続給付含む) | 失業中の求職活動中 |
| 支給条件 | 業務外の病気・ケガで労務不能 | 求職申込後に病気・ケガで15日以上働けない |
| 支給額 | 標準報酬日額の約3分の2 | 基本手当日額と同額 |
| 支給期間 | 通算1年6ヶ月 | 基本手当の所定給付日数の範囲内 |
雇用保険の傷病手当を受給できるケース
雇用保険の傷病手当は、失業給付(基本手当)の受給資格がある方が、求職の申し込みをした後に病気やケガで15日以上働けなくなった場合に支給されます。
具体的には、以下のような流れで受給します。
- 会社を退職し、ハローワークで求職の申し込みをする
- 求職活動中に病気やケガで15日以上継続して働けなくなる
- ハローワークに傷病手当の申請を行う
- 基本手当に代えて傷病手当が支給される
注意点:傷病手当金との併給は不可
健康保険の傷病手当金と雇用保険の傷病手当を同時に受給することはできません。両方の受給要件を満たす場合は、どちらか一方を選択する必要があります。
また、雇用保険の傷病手当は「働く意思と能力がある人が、病気やケガで一時的に働けなくなった場合」に支給されるものです。傷病手当金のように「長期療養中の生活保障」を目的とした制度ではない点に注意してください。
14日以内の場合は「基本手当」として処理
病気やケガによる就労不能期間が14日以内の場合は、傷病手当ではなく基本手当(失業給付)として支給されます。15日以上働けない場合に限り、傷病手当の対象となります。
生活保護など他の支援制度
傷病手当金の支給期間が終了し、障害年金の受給要件も満たさない場合や、年金だけでは生活が困難な場合は、他の公的支援制度を検討しましょう。
生活保護制度
生活保護は、病気やケガなどの理由で働けず、他に収入や資産がない場合に、最低限度の生活を保障する制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給内容 | 生活扶助、住宅扶助、医療扶助など |
| 申請先 | お住まいの地域の福祉事務所 |
| 受給要件 | 資産・収入が最低生活費を下回り、他の制度を活用しても生活できない |
生活保護を受給するには、まず預貯金や不動産などの資産を活用し、働ける場合は働き、他の制度(障害年金など)を利用しても生活できない状態であることが必要です。
傷病手当金や障害年金を受給していても、その金額が最低生活費に満たない場合は、差額分を生活保護として受給できる可能性があります。
自立支援医療制度(精神通院医療)
精神疾患の治療を継続している方は、自立支援医療制度を利用することで、医療費の自己負担を軽減できます。
- 対象:統合失調症、うつ病、躁うつ病、てんかん、薬物依存症など
- 自己負担:原則1割(所得に応じて月額上限あり)
- 申請先:お住まいの市区町村の障害福祉窓口
障害者手帳の取得
病気やケガによって一定の障害が残った場合、障害者手帳を取得することで様々な支援を受けられます。
| 手帳の種類 | 対象 | 主なメリット |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体に障害がある方 | 税金の減免、公共交通機関の割引、福祉サービス |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神疾患がある方 | 税金の減免、公共料金の割引、障害者雇用枠での就職 |
| 療育手帳 | 知的障害がある方 | 福祉サービス、税金の減免 |
その他の支援制度
| 制度 | 内容 | 対象者 |
|---|---|---|
| 高額療養費制度 | 月ごとの医療費が上限を超えた場合に払い戻し | 健康保険加入者 |
| 限度額適用認定証 | 窓口での支払いを自己負担限度額までに抑える | 健康保険加入者 |
| 傷病手当金付加金 | 法定給付に上乗せして支給 | 一部の健康保険組合加入者 |
| 住居確保給付金 | 家賃相当額を支給 | 離職等により住居を失うおそれがある方 |
| 緊急小口資金 | 一時的な資金の貸付 | 緊急かつ一時的に生計維持が困難な方 |
相談窓口
どの制度を利用できるかわからない場合は、以下の窓口に相談してみましょう。
- 市区町村の福祉課・生活支援課
- 社会福祉協議会
- 地域包括支援センター
- ハローワーク
傷病手当金の支給期間が終了する前に、利用できる制度を調べておき、切れ目なく支援を受けられるよう準備しておくことが大切です。
傷病手当金の期間に関するよくある質問

傷病手当金の支給期間については、制度が複雑なため、さまざまな疑問を持つ方が多くいます。特に、転職した場合の取り扱いや、うつ病などの精神疾患で長期療養する場合の期間、申請が遅れた場合の時効などは、多くの方が気になるポイントです。
ここでは、傷病手当金の期間に関してよく寄せられる質問にお答えします。
支給期間中に転職したらどうなる?
傷病手当金を受給中に転職した場合、支給がどうなるかは転職のタイミングや状況によって異なります。
ケース1:傷病が治癒してから転職した場合
病気やケガが完治し、労務可能な状態に回復してから転職した場合、傷病手当金の受給は終了します。転職先で新たに健康保険に加入しますが、前職での傷病手当金の支給期間は引き継がれません。
ただし、転職後に同じ傷病が再発した場合は注意が必要です。前職での傷病と「同一傷病」と判断されると、前回の支給開始日から通算1年6ヶ月の範囲内でしか受給できません。
ケース2:傷病が治癒しないまま退職し、その後転職した場合
退職後も継続給付として傷病手当金を受給していた方が、療養中に回復して転職した場合、転職時点で継続給付は終了します。
重要なのは、継続給付は「退職後も継続して労務不能であること」が要件という点です。一度でも働ける状態になり、転職や就労をすると、その後再び同じ傷病で働けなくなっても継続給付は再開されません。
ケース3:転職先で新たに傷病手当金を申請する場合
転職先の健康保険に加入した後、新たに別の傷病で労務不能になった場合は、転職先の健康保険から傷病手当金を申請できます。前職での受給歴は影響しません。
ただし、同一傷病の場合は前職の支給期間と通算されるため、残りの期間分しか受給できない可能性があります。
転職時の注意点まとめ
| 状況 | 傷病手当金の取り扱い |
|---|---|
| 治癒後に転職 | 前職の傷病手当金は終了。転職先では別傷病のみ新規申請可 |
| 療養中に転職 | 継続給付は終了。転職先での同一傷病は通算される |
| 転職後に別の傷病を発症 | 転職先で新たに最長1年6ヶ月の受給が可能 |
うつ病など精神疾患の場合の期間は?
うつ病や適応障害、統合失調症などの精神疾患で傷病手当金を受給する場合も、支給期間は他の傷病と同様に通算1年6ヶ月が上限です。精神疾患だからといって支給期間が延長されることはありません。
精神疾患で傷病手当金を受給する際のポイント
精神疾患は症状の波があり、回復と悪化を繰り返すことが多いため、以下の点に注意が必要です。
- 復職と休職を繰り返す場合 うつ病などで一度復職した後、再び症状が悪化して休職する場合、同一傷病として扱われます。2022年の法改正により支給期間が通算化されたため、復職期間は支給日数にカウントされず、合計で1年6ヶ月分の受給が可能です。
- 病名が変わった場合の取り扱い 精神疾患では、治療の過程で診断名が変わることがあります。たとえば「うつ病」から「双極性障害」に診断が変わった場合でも、実質的に同一の精神疾患と判断されれば、支給期間は通算されます。
- 社会的治癒の可能性 一度精神疾患が寛解し、数年間にわたって症状なく就労できた後に再発した場合、「社会的治癒」として別の傷病と認められる可能性があります。この場合は、新たに1年6ヶ月の支給期間が発生します。
社会的治癒が認められる可能性がある例
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 就労期間 | 数年間(明確な基準はないが、一般的に3〜5年程度) |
| 症状 | 服薬なし、または維持療法程度で症状が安定 |
| 就業状況 | フルタイムで通常業務をこなせている |
| 医師の意見 | 治癒または寛解と判断されている |
ただし、社会的治癒の判断は保険者(協会けんぽや健康保険組合)が行うため、必ず認められるわけではありません。再発時に新たな傷病として申請する場合は、事前に保険者に相談することをおすすめします。
精神疾患の療養が長引く場合の対策
傷病手当金の支給期間(1年6ヶ月)が満了しても回復しない場合は、以下の制度への移行を検討しましょう。
- 障害年金:初診日から1年6ヶ月経過後、障害等級に該当すれば申請可能
- 精神障害者保健福祉手帳:税金の減免や各種サービスを受けられる
- 自立支援医療:精神科の医療費自己負担が1割に軽減
傷病手当金の支給期間が終わる前から、障害年金の申請準備を進めておくと安心です。
申請が遅れた場合の時効は?
傷病手当金の申請が遅れた場合でも、時効の範囲内であれば遡って請求することができます。
傷病手当金の時効は2年
傷病手当金の請求権は、労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効により消滅します。つまり、申請が遅れても、2年以内であれば過去の分を遡って請求できます。
時効の起算点
時効は「労務不能であった日の翌日」から起算されます。たとえば、2024年1月15日に労務不能だった場合、その日の傷病手当金の請求権は2026年1月16日に時効を迎えます。
| 労務不能日 | 時効の起算日 | 時効完成日 |
|---|---|---|
| 2024年1月15日 | 2024年1月16日 | 2026年1月15日 |
| 2024年2月1日 | 2024年2月2日 | 2026年2月1日 |
| 2024年3月31日 | 2024年4月1日 | 2026年3月31日 |
まとめ:傷病手当金の期間を正しく理解し適切に受給しよう

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった際に、健康保険から支給される重要な生活保障制度です。支給期間や計算方法を正しく理解しておくことで、療養中の経済的な不安を軽減し、治療に専念できる環境を整えることができます。
傷病手当金の制度を正しく理解し、必要な手続きを適切に行うことで、療養期間中の生活を安定させることができます。この記事が、傷病手当金の受給を検討している方の参考になれば幸いです。
