この記事では、就業促進定着手当の受給条件や計算方法、申請手続きの流れをわかりやすく解説します。
就業促進定着手当とは?制度の概要

就業促進定着手当は、転職後に給与が下がってしまった方を支援する雇用保険の給付金です。再就職手当を受給した方が対象となり、条件を満たせば数万円〜数十万円を受け取れる可能性があります。
この章では、就業促進定着手当の基本的な仕組みや、混同されやすい再就職手当との違いについて解説します。
再就職後の賃金低下を補う給付金
就業促進定着手当とは、再就職手当を受給した方が再就職先で6ヶ月以上働き続けたものの、離職前より賃金が下がってしまった場合に支給される給付金です。雇用保険の「就職促進給付」のひとつに分類されます。
具体的には、離職前と再就職後の賃金の差額を、基本手当の支給残日数の40%(令和7年4月以降は20%)を上限として補填する仕組みです。
たとえば、前職で月給30万円だった方が転職後に月給25万円になった場合、その差額分の一部を受け取れます。支給額は人によって異なりますが、条件次第では10万円以上になることも珍しくありません。
この手当は自動的に支給されるものではなく、自分でハローワークに申請する必要があります。申請しなければ1円も受け取れないため、対象となる方は忘れずに手続きを行いましょう。
再就職手当との違いを解説
就業促進定着手当と再就職手当は、どちらも雇用保険の就職促進給付ですが、支給されるタイミングと目的が異なります。
| 項目 | 再就職手当 | 就業促進定着手当 |
|---|---|---|
| 支給タイミング | 再就職が決まったとき | 再就職から6ヶ月経過後 |
| 目的 | 早期の再就職を促進 | 再就職先への定着を支援 |
| 支給条件 | 失業手当の残日数が1/3以上 | 再就職手当を受給済み+賃金低下 |
再就職手当は、失業手当(基本手当)の受給期間中に早く再就職を決めた方へのボーナスのような位置づけです。支給残日数が多いほど、受け取れる金額も増えます。
一方、就業促進定着手当は再就職手当の「次のステップ」として位置づけられています。再就職手当を受け取った方だけが対象となり、実際に6ヶ月以上働いて職場に定着したことが支給の条件です。
つまり、両方の条件を満たせば再就職手当と就業促進定着手当の両方を受け取ることが可能です。
就業促進定着手当の目的と背景
就業促進定着手当が設けられた背景には、転職による収入減が早期離職につながるという問題があります。
せっかく再就職しても「前の会社より給料が下がったから辞めたい」と感じて短期間で退職してしまうケースは少なくありません。とくに前職での勤続年数が長い方ほど、転職後の賃金ギャップが大きくなる傾向があります。
就業促進定着手当は、この賃金差を一時的に補うことで、再就職先での定着を後押しする目的で創設されました。給与が下がっても一定期間は手当で補填されるため、経済的な不安を軽減しながら新しい職場に慣れることができます。
また、この制度には「早期再就職を促す」という狙いもあります。失業手当を満額受け取るまで再就職を先延ばしにするのではなく、早めに働き始めても損をしない仕組みを整えることで、労働市場全体の活性化にもつながっています。
就業促進定着手当の受給条件3つ

就業促進定着手当を受け取るには、3つの条件をすべて満たす必要があります。ひとつでも欠けていると支給対象外となるため、申請前にしっかり確認しておきましょう。
ここでは、それぞれの条件について詳しく解説します。
条件①再就職手当を受給していること
就業促進定着手当を受給するための大前提として、再就職手当をすでに受け取っていることが必要です。再就職手当を受給していない方は、他の条件を満たしていても就業促進定着手当の申請自体ができません。
再就職手当とは、失業手当(基本手当)の受給期間中に早期に再就職した方へ支給される手当です。以下の条件を満たした場合に受け取れます。
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上残っている
- 1年を超えて安定的に雇用される見込みがある
- 過去3年以内に再就職手当を受給していない
- 離職前の事業主に再び雇用されたものではない
再就職手当の支給決定通知書が届いた際に、就業促進定着手当の支給申請書も同封されています。この書類は申請時に必要となるため、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
なお、独立起業によって再就職手当を受給した場合は例外です。起業した方は雇用保険の被保険者ではなく事業主となるため、就業促進定着手当の対象外となります。
条件②同じ会社で6ヶ月以上勤務
2つ目の条件は、再就職した日から同じ会社で6ヶ月以上継続して働いていることです。加えて、その期間中は雇用保険の被保険者として加入している必要があります。
この「6ヶ月」の数え方には注意が必要です。給与の締め日によって起算日が変わります。
| 入社日のパターン | 6ヶ月の数え方 |
|---|---|
| 給与締め日の翌日に入社 | 入社日から6ヶ月 |
| 給与締め日の翌日以外に入社 | 入社後最初の締め日の翌日から6ヶ月 |
たとえば、月末締めの会社に4月1日入社した場合は、4月1日から数えて9月30日が6ヶ月経過日です。しかし、4月15日入社の場合は5月1日が起算日となり、10月31日が6ヶ月経過日になります。
また、以下のケースでは条件を満たさなくなる可能性があるため注意してください。
- 6ヶ月経過前に自己都合で退職した
- 6ヶ月経過前にグループ会社へ出向・転籍した
- 雇用保険に加入していない働き方だった
事業主都合の出向であっても、6ヶ月以内に雇用保険の被保険者資格を喪失した場合は支給対象外となります。
条件③賃金日額が離職前より低下
3つ目の条件は、再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回っていることです。
ここで重要なのは、比較するのが「月給の総額」ではなく「1日あたりの賃金(賃金日額)」である点です。月給ベースでは下がっているように見えても、日額で計算すると変わらない、もしくは上がっているケースもあります。
離職前の賃金日額は、雇用保険受給資格者証の14欄に記載されている金額を確認してください。再就職後の賃金日額は、以下の計算式で算出します。
月給制の場合 再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
日給制・時給制の場合 以下のいずれか高い方を採用
- 再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
- (再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 実際の勤務日数)× 70%
たとえば、離職前にフルタイムで働いていた方がパートとして再就職した場合、月給は下がっても勤務日数が少ないため、日額換算では以前と同等か上回ることがあります。この場合は支給対象外です。
なお、賃金には基本給だけでなく、残業手当・通勤手当・家族手当なども含まれます。ただし、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は含まれません。計算対象は税金や社会保険料が引かれる前の総支給額(額面)となります。
就業促進定着手当の計算方法

就業促進定着手当がいくらもらえるのかは、離職前と再就職後の賃金差額や基本手当の残日数によって変わります。計算方法を理解しておけば、自分がどの程度受け取れるか事前に把握できます。
ここでは、支給額の計算式から具体的なシミュレーションまで詳しく解説します。
支給額の計算式を解説
就業促進定着手当の支給額は、以下の計算式で算出します。
支給額 =(離職前の賃金日額 − 再就職後6ヶ月間の賃金の1日分の額)× 再就職後6ヶ月間の賃金の支払基礎日数
簡単に言えば、「1日あたりの賃金がいくら下がったか」に「働いた日数」を掛けた金額が支給されます。
たとえば、離職前の賃金日額が10,000円、再就職後の賃金日額が8,000円、支払基礎日数が180日の場合は以下のようになります。
(10,000円 − 8,000円)× 180日 = 360,000円
ただし、この計算で算出された金額がそのまま支給されるわけではありません。就業促進定着手当には上限額が設定されており、計算結果が上限を超える場合は上限額が支給されます。
また、離職前の賃金日額には年齢に応じた上限額と下限額があります。実際の賃金日額が上限を超えている場合は上限額で、下限を下回っている場合は下限額で計算されます。
賃金日額の算出方法
計算式に使う「離職前の賃金日額」と「再就職後の賃金日額」は、それぞれ異なる方法で算出します。
離職前の賃金日額
雇用保険受給資格者証の1面14欄に記載されている金額を使用します。自分で計算する必要はありません。
なお、賃金日額には以下の上限額・下限額が設定されています(毎年8月1日に改定)。
| 離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 14,130円 | 2,746円 |
| 30歳以上45歳未満 | 15,690円 | 2,746円 |
| 45歳以上60歳未満 | 17,270円 | 2,746円 |
| 60歳以上65歳未満 | 16,490円 | 2,746円 |
※令和6年8月1日時点の金額
再就職後6ヶ月間の賃金日額
月給制と日給制・時給制で計算方法が異なります。
月給制の場合は以下の計算式を使います。
再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
日給制・時給制の場合は、以下の2つの計算式で算出した金額のうち、高い方を採用します。
- 再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
- (再就職後6ヶ月間の賃金合計 ÷ 実際の勤務日数)× 70%
支払基礎日数について
支払基礎日数とは、賃金計算の基礎となった日数のことです。月給制の場合は暦日数(30日や31日など)、日給月給制の場合はその基礎となる日数を使用します。
支給上限額の計算と注意点
就業促進定着手当には上限額があり、計算した支給額がこれを超える場合は上限額が支給されます。
上限額の計算式
上限額 = 基本手当日額 × 基本手当の支給残日数 × 上限率
上限率は再就職手当の給付率によって決まります。
| 再就職手当の給付率 | 就業促進定着手当の上限率 |
|---|---|
| 70%(残日数2/3以上) | 30% |
| 60%(残日数1/3以上) | 40% |
※令和7年4月1日以降に再就職した場合は、一律20%に変更されます
基本手当日額は雇用保険受給資格者証の19欄に記載されていますが、こちらにも上限額があります。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 60歳未満 | 6,290円 |
| 60歳以上65歳未満 | 5,085円 |
※令和6年8月1日時点の金額
注意点
上限額の計算で使う「支給残日数」は、再就職手当を受け取る前の残日数ではなく、再就職時点での残日数です。雇用保険受給資格者証の3面で確認できます。
差額が大きいほど支給額も増えると思われがちですが、上限額を超えた分は支給されません。そのため、賃金の下がり幅が大きくても、実際に受け取れる金額は上限額で頭打ちになります。
計算シミュレーション【具体例】
実際にどの程度の金額が支給されるのか、2つのケースでシミュレーションしてみましょう。
ケース1:月給27万円から25万円に下がった場合
- 離職前の賃金日額:9,000円(27万円÷30日)
- 再就職後の賃金日額:8,333円(25万円÷30日)
- 支払基礎日数:180日
- 基本手当日額:5,000円
- 支給残日数:60日
- 再就職手当の給付率:60%
支給額の計算: (9,000円 − 8,333円)× 180日 = 120,060円
上限額の計算: 5,000円 × 60日 × 40% = 120,000円
計算上の支給額(120,060円)が上限額(120,000円)をわずかに超えているため、支給額は120,000円となります。
ケース2:月給30万円から時給1,200円のパートに転職した場合
- 離職前の賃金日額:10,000円(30万円÷30日)
- 再就職後6ヶ月間の賃金合計:115万2,000円(時給1,200円×8時間×20日×6ヶ月)
- 再就職後の賃金日額:6,400円(115万2,000円÷180日)
- 支払基礎日数:120日(実際の勤務日数)
- 基本手当日額:5,500円
- 支給残日数:70日
- 再就職手当の給付率:70%
支給額の計算: (10,000円 − 6,400円)× 120日 = 432,000円
上限額の計算: 5,500円 × 70日 × 30% = 115,500円
計算上の支給額(432,000円)が上限額(115,500円)を大きく超えているため、支給額は115,500円となります。
このように、賃金の下がり幅が大きくても上限額で制限されるため、実際の支給額は10万円〜15万円程度になるケースが多いです。
就業促進定着手当の申請方法と必要書類

就業促進定着手当は、条件を満たしていても自分で申請しなければ受け取れません。申請には複数の書類が必要で、再就職先の会社に準備してもらうものもあります。
ここでは、必要書類の詳細から申請書の書き方、提出方法まで順を追って解説します。
申請に必要な4つの書類
就業促進定着手当の申請には、以下の4つの書類が必要です。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 出勤簿またはタイムカードの写し(6ヶ月分)
- 給与明細または賃金台帳の写し(6ヶ月分)
このうち、3と4は再就職先の会社に準備を依頼する必要があります。会社の人事・総務部門の対応状況によっては時間がかかることもあるため、申請期間に入ったら早めに依頼しましょう。
それぞれの書類について詳しく説明します。
就業促進定着手当支給申請書
就業促進定着手当支給申請書は、再就職手当の支給決定通知書と一緒にハローワークから郵送されてきます。届く時期は再就職してからおおむね5ヶ月後です。
郵送先は、再就職手当の申請時に届け出た住所です。再就職手当を申請した後に引っ越しをした場合は、郵便局に転居届を提出していないと届かない可能性があるため注意してください。
万が一、申請書を紛失した場合や届かない場合は、ハローワークインターネットサービスからダウンロードできます。また、ハローワークの窓口でも入手可能です。
この申請書には、自分で記入する欄と会社に記入してもらう欄があります。会社記入欄には6ヶ月間の賃金支払い状況などを記載するため、出勤簿や給与明細の写しと一緒に会社へ依頼するとスムーズです。
雇用保険受給資格者証
雇用保険受給資格者証は、離職後にハローワークで求職申し込みと離職票の提出を行い、受給資格が認められた際に交付される書類です。失業手当の受給手続きで使用しているため、手元にあるはずです。
この書類には離職前の賃金日額や基本手当日額、支給残日数など、就業促進定着手当の計算に必要な情報が記載されています。申請時に提出が求められるため、なくさないよう保管しておきましょう。
紛失してしまった場合は、ハローワークで再発行の手続きが可能です。再発行には本人確認書類(運転免許証など)と印鑑が必要になります。本人が直接窓口で申請する場合は、印鑑の代わりに署名でも対応可能です。
出勤簿またはタイムカードの写し
再就職日から6ヶ月間の勤務状況を証明するため、出勤簿またはタイムカードの写しが必要です。
対象となる期間は、就職日によって異なります。
| 就職日のパターン | 対象期間 |
|---|---|
| 給与締め日の翌日に入社 | 就職日から6ヶ月分 |
| 給与締め日の翌日以外に入社 | 就職後最初の締め日の翌日から6ヶ月分 |
たとえば、月末締めの会社に4月1日入社なら4月〜9月分、4月15日入社なら5月〜10月分が必要です。
この書類は再就職先の会社から取得します。写しには会社による「原本証明」が必要です。原本証明とは、コピーの余白に以下の内容を記載してもらうことです。
- 「原本と相違ないことを証明する」という文言
- 証明日
- 事業所名
- 代表者氏名
- 代表者印
給与明細または賃金台帳の写し
出勤簿と同じ期間の給与明細または賃金台帳の写しも必要です。こちらも会社による原本証明が求められます。
給与明細は毎月受け取っているはずですが、紛失している場合は会社に再発行を依頼するか、賃金台帳の写しで代用できます。
この書類は支給申請書に記載された賃金支払い状況の裏付けとなるため、会社記入欄の内容と整合性が取れている必要があります。出勤簿の写しと一緒に会社へ依頼すると、手間が省けて効率的です。
申請書の書き方と記入例
就業促進定着手当支給申請書は、本人記入欄と会社記入欄に分かれています。
本人記入欄(上部と下部)
申請書の上部には以下の項目を記入します。
- 支給番号(受給資格者証に記載されている番号)
- フリガナ・氏名
- 郵便番号・住所
- 電話番号
ただし、再就職手当の申請時から変更がない場合は記入不要です。引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わった場合のみ記入してください。
申請書の下部(16欄)には、以下を記入します。
- 申請年月日(提出日または郵送日)
- 署名
上部の記入欄はボールペンまたは鉛筆(HB程度)で記入できますが、下部の署名欄は必ずボールペンなど消えない筆記具を使用してください。
会社記入欄(中部)
11欄〜15欄は再就職先の会社に記入してもらいます。主な記入内容は以下のとおりです。
- 事業所の名称・所在地・電話番号
- 雇用保険事業所番号(11桁)
- 1週間の所定労働時間
- 求人申し込み時に明示した賃金(月額)
- 6ヶ月間の賃金支払い状況(賃金支払対象期間・支払基礎日数・賃金額)
記入を依頼する際は、出勤簿と給与明細の写しも一緒にお願いすると、会社側も確認しながら記入できるためミスを防げます。
記入時の注意点
- 訂正する場合は、二重線で消して訂正印を押す(上部をボールペンで記入した場合は書き直しを推奨)
- シャチハタなどのスタンプ式印鑑は使用不可
- 会社記入欄の内容に誤りがあった場合は、会社に修正を依頼して再提出が必要
申請先と提出方法
書類が揃ったら、再就職手当の申請を行ったハローワークに提出します。引っ越しなどで管轄が変わっていても、申請先は再就職手当を申請したハローワークです。
提出方法は3つ
| 提出方法 | 詳細 |
|---|---|
| 窓口持参 | ハローワークの給付窓口に直接持参 |
| 郵送 | 再就職手当を申請したハローワーク宛に郵送 |
| 電子申請 | e-Gov電子申請システムを利用 |
窓口に行く時間が取れない場合は、郵送でも申請可能です。郵送する際は、申請書がOCR(光学文字認識)で読み取られるため、折り曲げないよう注意してください。角形2号などの大きめの封筒を使用し、「就業促進定着手当支給申請書在中」と記載しておくと安心です。
代理人による申請も認められていますが、その場合は委任状が必要です。事前にハローワークへ確認しておきましょう。
申請から振り込みまでの流れ
- 必要書類をハローワークに提出
- 審査(約2週間〜1ヶ月)
- 支給決定通知書が届く
- 届いてから1週間以内に指定口座へ振り込み
申請から振り込みまでは、おおむね1ヶ月〜1.5ヶ月程度かかります。自治体によって処理スピードが異なるため、詳しくは申請先のハローワークに確認してください。
申請期間と振込時期

就業促進定着手当の申請期間は比較的短く設定されています。期限を過ぎると原則として申請できなくなるため、スケジュールをしっかり把握しておくことが大切です。
ここでは、申請期間の数え方や振込までの流れを詳しく解説します。
申請期間は6ヶ月経過後から2ヶ月間
就業促進定着手当の申請期間は、再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間です。
具体例で見てみましょう。
| 再就職日 | 6ヶ月経過日 | 申請期間 |
|---|---|---|
| 4月1日 | 9月30日 | 10月1日〜11月30日 |
| 7月15日 | 1月14日 | 1月15日〜3月14日 |
| 10月1日 | 3月31日 | 4月1日〜5月31日 |
申請開始日より前に書類を提出しても受理されません。また、申請期限を1日でも過ぎると原則として受け付けてもらえないため注意が必要です。
ただし、申請期限を過ぎてしまった場合でも、時効期間内であれば申請できる可能性があります。時効は6ヶ月経過日の翌日から2年間です。やむを得ない事情で期限内に申請できなかった場合は、ハローワークに相談してみてください。
申請書類の準備には時間がかかることもあるため、申請期間に入る前から書類を揃えておくことをおすすめします。とくに会社に依頼する出勤簿や給与明細の写しは、担当者の業務状況によって対応に時間がかかる場合があります。6ヶ月経過の1ヶ月前くらいから準備を始めると安心です。
「6ヶ月」の数え方に注意
申請期間を正確に把握するには、「6ヶ月」の起算日がいつになるかを理解しておく必要があります。起算日は就職日と給与締め日の関係によって変わります。
パターン1:就職日が給与締め日の翌日の場合
就職日がそのまま起算日となり、就職日から6ヶ月で計算します。
例:月末締めの会社に4月1日入社
- 起算日:4月1日
- 6ヶ月経過日:9月30日
- 申請期間:10月1日〜11月30日
パターン2:就職日が給与締め日の翌日ではない場合
就職後最初の給与締め日の翌日が起算日となります。
例:月末締めの会社に4月15日入社
- 最初の締め日:4月30日
- 起算日:5月1日
- 6ヶ月経過日:10月31日
- 申請期間:11月1日〜12月31日
このように、同じ4月入社でも入社日が違うだけで申請期間が1ヶ月ずれることがあります。
パターン2の場合、実質的な申請期間が短くなる点にも注意が必要です。6ヶ月分の給与明細が揃うのが遅くなるため、書類の準備期間が圧縮されます。会社への依頼を早めに行い、申請が遅れないようにしましょう。
自分の申請期間がいつからいつまでか不明な場合は、再就職先の給与締め日を確認したうえでハローワークに問い合わせると確実です。
振込は申請から約1ヶ月〜1.5ヶ月後
申請書類を提出してから実際に振り込まれるまでには、一定の審査期間があります。
振込までの流れ
- ハローワークに申請書類を提出
- 書類の審査(約2週間〜1ヶ月)
- 支給決定通知書が届く
- 届いてから約1週間以内に振り込み
申請から振り込みまでの期間は、おおむね1ヶ月〜1.5ヶ月程度です。ただし、審査にかかる時間は地域や時期によって異なります。年度末や年度初めなど、ハローワークが繁忙期の場合はさらに時間がかかることもあります。
振込先は、失業手当を受給していたときに届け出た口座です。口座を変更したい場合は、申請時にハローワークへ届け出てください。
審査が長引くケース
以下のような場合は、通常より審査に時間がかかることがあります。
- 提出書類に不備や記入漏れがある
- 申請書と添付書類の内容に矛盾がある
- 会社記入欄の賃金額と給与明細の金額が一致しない
- 追加の確認が必要な事項がある
書類の不備があると修正・再提出を求められ、さらに時間がかかります。提出前に記入漏れや添付書類の不足がないか、しっかり確認しておきましょう。
振込状況を確認したい場合は、申請先のハローワーク給付窓口に問い合わせれば教えてもらえます。支給決定通知書が届いてから1週間以上経っても振り込まれない場合は、一度連絡してみてください。
就業促進定着手当の注意点5つ

就業促進定着手当は、条件を満たしていても申請方法を間違えたり期限を過ぎたりすると受け取れなくなります。せっかくの給付金を逃さないために、事前に注意点を押さえておきましょう。
ここでは、申請時によくある失敗や見落としがちなポイントを5つ解説します。
申請期限を過ぎないよう早めに準備
就業促進定着手当の申請期間は、再就職日から6ヶ月経過した翌日から2ヶ月間と決められています。この期間を過ぎると原則として申請が受理されません。
2ヶ月間あると思うと余裕があるように感じますが、実際には書類の準備に時間がかかり、気づいたら期限間近だったというケースが少なくありません。
とくに注意が必要なのは、就職日が給与締め日の翌日ではない場合です。この場合、起算日が後ろにずれるため、書類が揃うタイミングと申請期限が近くなります。実質的に1ヶ月程度しか猶予がないこともあります。
おすすめは、6ヶ月経過の1ヶ月前から準備を始めることです。以下のスケジュールを目安にしてください。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 5ヶ月目 | 申請書が届いているか確認 |
| 5ヶ月半 | 会社に出勤簿・給与明細の写しを依頼 |
| 6ヶ月経過後すぐ | ハローワークへ申請 |
なお、申請期限を過ぎても2年間の時効期間内であれば申請できる可能性があります。ただし、確実に受給するためには期限内の申請を心がけましょう。
住所変更時は転居届の提出が必要
就業促進定着手当の支給申請書は、再就職手当を申請したときに届け出た住所へ郵送されます。再就職後に引っ越しをした場合、転居届を出していないと申請書が届かない恐れがあります。
転居届は郵便局で手続きできます。届け出ておけば、旧住所宛ての郵便物が1年間は新住所へ転送されます。再就職手当の申請後に引っ越した方は、早めに手続きを済ませておきましょう。
申請書が届かない場合の対処法は以下のとおりです。
- ハローワークに連絡して再送を依頼する
- ハローワークインターネットサービスから申請書をダウンロードする
- ハローワークの窓口で直接受け取る
また、転居届を出していても届かないことがあります。再就職から5ヶ月を過ぎても届かない場合は、ハローワークに問い合わせてください。
住所変更はハローワークへの届け出も必要です。郵便局への転居届だけでなく、ハローワークにも新住所を届け出ておくと、今後の手続きがスムーズになります。
比較するのは「月給」ではなく「日額」
就業促進定着手当の支給条件は、「再就職後の賃金が離職前より低いこと」です。しかし、比較するのは月給の総額ではなく、1日あたりの賃金(賃金日額)である点に注意が必要です。
月給で見ると下がっているのに、日額で計算すると変わらない、あるいは上がっているケースがあります。この場合は支給対象外となります。
とくに該当しやすいのは、以下のようなケースです。
フルタイムからパート・アルバイトに転職した場合
前職ではフルタイムで月給25万円だった方が、再就職後は週4日勤務で月給16万円になったとします。月給だけ見ると9万円も下がっていますが、勤務日数が減っているため日額では大きく変わらないことがあります。
残業が減った場合
前職では残業が多く月給35万円だったが、再就職後は残業がなく月給28万円になった場合でも、基本給ベースの日額で見ると差が小さい可能性があります。
支給対象になるかどうか気になる場合は、以下の計算で確認してみてください。
- 離職前の賃金日額:雇用保険受給資格者証の14欄に記載
- 再就職後の賃金日額:6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
再就職後の日額が離職前を下回っていれば、支給対象となります。
会社への書類依頼は余裕を持って
就業促進定着手当の申請には、再就職先の会社に準備してもらう書類があります。申請書の会社記入欄の記入に加え、出勤簿と給与明細の写しには原本証明も必要です。
会社の人事・総務部門は日常業務を抱えているため、依頼してもすぐに対応してもらえるとは限りません。以下のような理由で時間がかかることがあります。
- 担当者が繁忙期で対応が遅れる
- 承認者が出張や休暇で不在
- 社内での確認・承認フローに時間がかかる
- 原本証明に代表者印が必要で押印に時間がかかる
申請期限ギリギリに依頼すると、間に合わなくなるリスクがあります。6ヶ月経過の2〜3週間前には依頼できるよう、早めに動きましょう。
会社に依頼する際は、以下の点を伝えるとスムーズです。
- 就業促進定着手当の申請に必要な書類であること
- 申請期限がいつまでか
- 記入してほしい箇所の説明
- 原本証明が必要であること
また、依頼時に申請書のコピーを渡し、記入箇所に付箋を貼っておくと、担当者も対応しやすくなります。
起業による再就職は対象外
再就職手当は、会社に雇用される場合だけでなく、独立起業した場合にも支給されることがあります。しかし、就業促進定着手当は起業者には支給されません。
就業促進定着手当の支給条件のひとつに「雇用保険の被保険者として6ヶ月以上雇用されていること」があります。起業した場合、本人は事業主となるため雇用保険の被保険者にはなれません。そのため、どれだけ収入が減っていても対象外となります。
以下のケースも対象外となるため注意してください。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| フリーランスとして独立 | 雇用関係がないため被保険者になれない |
| 自分で会社を設立して代表に就任 | 代表者は被保険者になれない |
| 家族の会社で役員として働く | 役員は原則として被保険者になれない |
ただし、起業後に別の会社に雇用され、そこで6ヶ月以上働いて賃金が下がった場合は、改めて受給条件を満たせば申請できる可能性があります。詳しくはハローワークに相談してください。
再就職手当を起業で受給した方は、就業促進定着手当の申請書が届いても対象外であることを認識しておきましょう。
就業促進定着手当のよくある質問

就業促進定着手当について調べていると、さまざまな疑問が出てくるものです。ここでは、申請を検討している方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
パートやアルバイトでも受給できる?
パートやアルバイトとして再就職した場合でも、条件を満たせば就業促進定着手当を受給できます。雇用形態による制限はありません。
受給のポイントは、再就職先で雇用保険に加入しているかどうかです。雇用保険の加入条件は以下のとおりです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
この条件を満たしていれば、パートやアルバイトでも雇用保険の被保険者となり、就業促進定着手当の対象になります。
ただし、注意点があります。パートやアルバイトの場合、フルタイム勤務と比べて勤務日数が少ないため、賃金日額の計算で不利になることがあります。
月給ベースでは明らかに下がっていても、日額で計算すると離職前とほぼ変わらない、もしくは上がっているケースがあるのです。この場合は「賃金日額が離職前より低下」という条件を満たさないため、支給対象外となります。
申請前に、自分の再就職後の賃金日額を計算して確認しておくことをおすすめします。
申請書が届かない場合はどうする?
就業促進定着手当支給申請書は、再就職からおおむね5ヶ月後にハローワークから郵送されます。届くはずの時期を過ぎても届かない場合は、以下の原因が考えられます。
よくある原因と対処法
| 原因 | 対処法 |
|---|---|
| 再就職手当申請後に引っ越した | 郵便局に転居届を提出する |
| 郵便事故で届いていない | ハローワークに連絡して再送を依頼 |
| 届いていたが紛失した | ハローワークで再取得またはダウンロード |
申請書はハローワークインターネットサービスからダウンロードすることも可能です。「就業促進定着手当支給申請書」で検索すると、PDFファイルを入手できます。
また、ハローワークの窓口に直接行けば、その場で申請書を受け取れます。身分証明書を持参して、給付窓口で「就業促進定着手当の申請書がほしい」と伝えてください。
申請書が届かないからといって申請を諦める必要はありません。ただし、申請期限は変わらないため、届かないと気づいた時点で早めに行動しましょう。
申請期限を過ぎた場合は?
原則として、就業促進定着手当の申請期限(6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月間)を過ぎると申請は受け付けてもらえません。しかし、完全に受給の権利がなくなるわけではありません。
就業促進定着手当には2年間の時効が設定されています。時効の起算日は、6ヶ月経過日の翌日です。つまり、この日から2年以内であれば、申請が認められる可能性があります。
たとえば、4月1日に再就職した場合は以下のようになります。
- 6ヶ月経過日:9月30日
- 申請期間:10月1日〜11月30日
- 時効期限:2年後の9月30日
申請期限を過ぎてしまった場合は、まずハローワークに相談してください。遅延の理由や状況によっては、申請を受け付けてもらえることがあります。
ただし、時効期間内であっても必ず支給されるとは限りません。確実に受給するためには、やはり申請期限内に手続きを完了させることが大切です。今後のために、スケジュール管理をしっかり行いましょう。
受給後すぐに退職しても問題ない?
就業促進定着手当を受給した後に退職しても、手当を返還する必要はありません。支給条件である「6ヶ月以上の勤務」をすでに達成しているため、その後の退職は支給に影響しないのです。
就業促進定着手当は、再就職して6ヶ月間働いたという実績に対して支給されるものです。将来にわたって働き続けることを約束させるものではありません。
ただし、退職後の生活設計については慎重に考える必要があります。
退職後に関わる制度について
就業促進定着手当を受給した後に退職して失業状態になった場合、残っている基本手当の日数分を受給できる可能性があります。ただし、以下の点に注意してください。
- 再就職手当と就業促進定着手当として支給された日数分は差し引かれる
- 12ヶ月以上(解雇・倒産の場合は6ヶ月以上)働いた場合は、新たな受給資格が発生する
再就職先で12ヶ月以上勤務した場合は、新しい雇用保険の受給資格が生じます。この場合、以前の残日数ではなく、新たな受給資格で基本手当を受給することになります。
退職を考えている場合は、今後の失業手当や再就職活動への影響も含めて検討しましょう。詳しくはハローワークに相談すれば、個別の状況に応じたアドバイスを受けられます。
まとめ:就業促進定着手当で転職後の収入減をカバーしよう

就業促進定着手当は、転職後に給与が下がってしまった方を支援する雇用保険の給付金です。条件を満たせば数万円〜十数万円を受け取れる可能性があり、新しい職場に慣れるまでの経済的な負担を軽減できます。
この制度を上手に活用して、転職後の生活を安定させてください。
