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退職後も傷病手当金はもらえる?継続受給の条件と申請方法を解説

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本記事では、退職後の傷病手当金を受給するための条件や申請手続き、支給期間・金額の計算方法、受給できないケース、失業保険との関係まで詳しく解説します。

目次

退職後も傷病手当金を受給できる2つの条件

病気やケガで療養中に退職を考えている方にとって、「退職したら傷病手当金はもらえなくなるのでは?」という不安は大きいものです。

結論からお伝えすると、退職後も傷病手当金を継続して受給することは可能です。ただし、これは「資格喪失後の継続給付」と呼ばれる制度で、一定の条件をすべて満たす必要があります。

退職後の傷病手当金を受給するための条件は、大きく分けて2つあります。

1つ目は「健康保険の加入期間が1年以上あること」、

2つ目は「退職日に傷病手当金を受給中、または受給要件を満たしていること」です。

この2つの条件を満たしていれば、退職して国民健康保険に切り替えたり、家族の扶養に入ったりしても、引き続き傷病手当金を受け取ることができます。それぞれの条件について詳しく解説していきます。

健康保険の加入期間が1年以上あること

退職後に傷病手当金を継続受給するための1つ目の条件は、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があることです。

ここでいう被保険者期間とは、協会けんぽや健康保険組合などの健康保険に加入していた期間を指します。任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、または国民健康保険に加入していた期間は含まれません。

転職経験がある方も心配する必要はありません。転職などで保険者が変わっていても、1日も間が空くことなく連続していれば通算することができます。

例えば、A社で8ヶ月、B社で6ヶ月と健康保険に加入していた場合、両社の間に空白期間がなければ合計1年2ヶ月として認められます。

ただし注意が必要なのは、転職などで1年間のうち1日でも任意継続被保険者や国民健康保険に加入した期間があると支給されません。

転職の際に入社日まで間が空いてしまい、その間だけ国民健康保険に加入したケースでは、被保険者期間がリセットされてしまいます。今後退職を考えている方は、ご自身の健康保険の加入履歴を一度確認しておくことをおすすめします。

退職日に傷病手当金を受給中または受給要件を満たしていること

2つ目の条件は、資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていることです。

「すでに傷病手当金を受給中」のケースはわかりやすいでしょう。在職中から傷病手当金をもらっている方は、退職後も継続して受給できる可能性が高いです。

一方、「受ける条件を満たしている」とはどういう状態でしょうか。これは、給与(報酬)を受けていたことによって傷病手当金の受給権が停止されただけであって、消滅したわけではないケースを指します。

具体的には、休職中でも会社から給与が支払われていたため傷病手当金を申請していなかった場合や、退職時に有給休暇を取得していたために傷病手当金の支給を受けていなかった場合も同様に、受給資格があると認められます。

また、傷病手当金を受給するためには「待期期間」の完成が必要です。退職日の前日までに連続して3日間出勤しない「待期」が完成し、退職日も医師が働けないと認めて欠勤していることが求められます。

待期期間の3日間は、有給休暇や公休日でも問題ありません。連続していることが重要で、例えば土日と月曜日の3日間を連続して休めば待期は完成します。

退職日に出勤すると受給資格を失う点に注意

退職後の傷病手当金継続受給において、最も注意すべきポイントがあります。それは退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできませんという点です。

これは見落としがちな落とし穴です。退職日にたとえ短時間であっても出勤をした方は請求期間が継続されず、資格喪失後の請求は対象外となります。

退職日といえば、お世話になった上司や同僚への挨拶回りや、私物の整理、業務の引き継ぎなどで出社したいと考える方も多いでしょう。しかし、傷病手当金の継続受給を考えている場合、この行動が受給資格を失う原因になってしまいます。

ここで重要なのは「出勤」と「出社」の違いです。事務手続きや会社にある私物整理のため、出社することは問題ありません。重要なのは”出勤扱い”にしないこと。そして出社したとしても仕事はしないことです。

出勤簿やタイムカード上で「出勤」として記録されなければ、傷病手当金の受給資格には影響しません。退職日に”出勤”さえしなければ、公休・有給・欠勤どれでも問題ありません。

退職日に引き継ぎ業務がある場合は、退職日には終了する日程で早めに済ませておきましょう。お世話になった方への挨拶は、メールや電話で行うか、退職日より前に済ませておくことをおすすめします。

退職後の傷病手当金はいつまでもらえる?支給期間と金額

退職後も傷病手当金を継続して受給できることがわかったとしても、「いつまで」「いくら」もらえるのかは気になるポイントです。

傷病手当金には支給期間の上限が定められており、退職したからといって支給期間が延長されるわけではありません。また、支給額の計算方法も在職中と同様のルールが適用されます。

この章では、退職後の傷病手当金の支給期間と支給額について詳しく解説していきます。

支給期間は支給開始日から通算1年6ヶ月

傷病手当金の支給期間は、同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までと定められています。

ここで注意したいのは、「退職日から1年6ヶ月」ではないということです。受給できる期間は「支給開始日」から通算して1年6ヵ月の範囲内です。「退職日」から1年6ヵ月ではないことに注意が必要です。

例えば、在職中に6ヶ月間傷病手当金を受給してから退職した場合、退職後に受給できる期間は残りの1年間となります。すでに1年間傷病手当金を受給してから退職した場合、退職後は残りの6ヵ月間のみ受給できます。

支給額の計算方法と具体例

傷病手当金の支給額は、退職後も在職中と同じ計算方法で算出されます。傷病手当金の1日あたりの支給額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、3分の2を掛けて計算されます。

計算式を整理すると以下のようになります。

1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3

標準報酬月額が30万円の場合には1日当たりの手当金が6,667円。月あたりが20万円となる。なお、ここでいう標準報酬月額には給与だけでなく、残業手当や通勤手当、住宅手当なども含まれます。

つまり、おおよそ給与(額面)の3分の2程度が傷病手当金として支給されることになります。

具体例で計算してみましょう。

【例1】標準報酬月額30万円の場合

  • 1日あたりの支給額:300,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円
  • 1ヶ月(30日)の支給額:約20万円

【例2】標準報酬月額24万円の場合

  • 1日あたりの支給額:240,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 約5,333円
  • 1ヶ月(30日)の支給額:約16万円

なお、健康保険の加入期間が12ヶ月に満たない場合は計算方法が異なります。以下のいずれか低い額を用いて計算することとなる。前年度9月30日における、加入している健康保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額と、ご自身の標準報酬月額の平均額を比較し、低い方が採用されます。

また、傷病手当金自体は非課税ですが、休職中も社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)と住民税(前年の所得にかかる分)の支払いは必要です。退職後は会社の健康保険から外れるため、国民健康保険料や任意継続の保険料が新たに発生する点も考慮しておきましょう。

在職中に受給していた期間も通算される

退職後に傷病手当金の継続給付を受ける場合、退職した場合でも1年6ヶ月の支給期間が伸びることはない点を改めて強調しておきます。

傷病手当金の支給期間は、在職中に受給を開始した時点からカウントが始まっています。退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受けることができます。あくまで「残りの期間」であり、退職を機に支給期間がリセットされることはありません。

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

【ケース1】在職中に3ヶ月受給後に退職

  • 支給開始から3ヶ月経過
  • 退職後に受給できる残り期間:1年3ヶ月

【ケース2】在職中に1年受給後に退職

  • 支給開始から1年経過
  • 退職後に受給できる残り期間:6ヶ月

【ケース3】在職中に1年6ヶ月受給後に退職

  • 支給期間満了
  • 退職後に受給できる期間:なし

このように、在職中にどれだけの期間受給していたかによって、退職後の受給可能期間が決まります。

また、退職日まで受けていた傷病手当金の期間が1年6ヶ月に満たないとき、退職後引き続き同じ病気で働けないことが継続給付の条件となっています。すでに1年6ヶ月の支給期間が満了している場合は、退職後に同じ傷病で働けない状態が続いていても、傷病手当金を受給することはできません。

退職前に現在の支給状況を確認し、残りの支給期間がどれくらいあるのかを把握しておくことが大切です。健康保険組合や協会けんぽに問い合わせれば、現在の支給状況と残りの支給可能期間を確認することができます。

退職後の傷病手当金の申請手続きと必要書類

退職後に傷病手当金を受給するためには、正しい手順で申請手続きを行う必要があります。在職中は会社が手続きを代行してくれることが多いですが、退職後は基本的に自分自身で申請を行わなければなりません。

この章では、退職後の傷病手当金の申請先、必要書類、申請のタイミングについて詳しく解説します。事前に手続きの流れを把握しておくことで、スムーズに申請を進めることができます。

申請先は退職時に加入していた健康保険組合

退職後の傷病手当金の申請先は、在職中に加入していた健康保険組合に直接提出します。協会けんぽの場合は、以前の事業所を管轄していた支部に提出します。

退職して国民健康保険に切り替えた場合や、家族の扶養に入った場合でも、傷病手当金の申請先は変わりません。あくまで在職時に加入していた健康保険組合への申請となります。

申請時のポイントとして、退職後の申請の場合、在職時の被保険者証の記号・番号をご記入ください。退職前に被保険者証の記号番号を控えておくことを忘れないようにしましょう。

在職中の申請との大きな違いは、一般的に在職時の傷病手当金の申請手続きは会社が行いますが、退職後については、退職後の申請については被保険者本人が行います。会社を介さず個人で手続きを行うため、書類の準備や提出をすべて自分で行う必要があります。

また、事業主の証明は必要ありませんが、申請期間に退職日が含まれる場合、退職日までの事業主の証明が必要です。例えば、月の途中で退職した場合、その月の申請書には退職日までの期間について事業主の証明をもらう必要があります。

申請に必要な書類一覧

退職後の傷病手当金申請に必要な書類は、以下のとおりです。

必要書類: 申請書、医師の意見書、健康保険資格喪失証明書(退職したことの証明)、その他健康保険組合が必要と認める書類などが求められる場合があります。

それぞれの書類について詳しく見ていきましょう。

傷病手当金支給申請書

傷病手当金の申請に最も重要な書類が「傷病手当金支給申請書」です。傷病手当金支給申請書(被保険者記入用2枚、事業主記入用1枚、療養担当者記入用1枚)の4枚1組となっています。

退職後の申請では、被保険者記入用と療養担当者記入用の記入が必要です。事業主記入用については、退職後の期間分は不要ですが、申請期間に退職日が含まれる場合は退職日までの期間について記入が必要となります。

申請書は協会けんぽや各健康保険組合のホームページからダウンロードできます。被保険者証の記号番号を正しく記入していますか。退職後の申請の場合、在職時の被保険者証の記号・番号をご記入ください。記入漏れや誤りがあると審査に時間がかかりますので、提出前に十分確認しましょう。

医師の意見書(労務不能の証明)

傷病手当金の申請には、医師による「労務不能」の証明が不可欠です。これは傷病手当金支給申請書の「療養担当者記入用」の部分に、主治医が記入します。

医師には、療養のために仕事ができない状態であることを証明してもらいます。退職後も定期的に通院を続け、労務不能の状態を適切に評価してもらうことが大切です。

医師の意見書の代わりに診断書を提出してもいいですか?診断書を医師意見書の代わりとすることはできません。申請書に記入してもらってください。別途診断書を用意しても代用にはなりませんので、必ず申請書に直接記入してもらいましょう。

なお、転院した場合は、それぞれの病院で治療を受けていた期間について記入してもらってください。複数の医療機関で治療を受けている場合は、各医療機関で療養期間に応じた証明をもらう必要があります。

医師の証明には手数料がかかることが一般的です。そのため、1ヵ月単位で申請する方が多いようですが、申請には医師の証明が必要であり、医師の証明を発行するには手数料がかかるため、3ヵ月単位で申請する方もいます。ご自身の状況に合わせて申請のタイミングを決めるとよいでしょう。

申請のタイミングと時効に注意

退職後の傷病手当金の申請タイミングについて、特に決まったルールはありません。退職後の申請については、特に決まりがないため、対象者が自分である程度の期間を区切って申請をします。

ただし、傷病手当金には時効があります。傷病手当金の時効は、労務不能であった日ごとに、その翌日から2年と定められています。

この時効は、申請期間全体に対してではなく、傷病手当金は1日単位で支払われるため、時効も1日単位で発生します。つまり、労務不能だった日ごとに、その翌日から2年が経過すると、その日の分は請求できなくなります。

例えば、令和4年11月15日分の傷病手当金については、令和6年11月14日までに申請をしないと、時効によって消滅してしまいます。

2年間あるからといって後回しにせず、できるだけ早めに申請することをおすすめします。申請から支給までにも時間がかかりますので、生活費の確保という観点からも、定期的に申請を行うことが大切です。

申請から振り込みまでの期間は、審査の結果お支払い可能であれば、受付から10営業日以内にお支払いいたします。ただし、初回申請や書類に不備がある場合、医師や年金機構への照会が必要な場合は、さらに時間がかかることがあります。書類の審査には1か月以上かかる場合があります。余裕をもって申請し、経済的な準備をしておくことが大切です。

申請書類に不備があると、書類が返却されて再提出が必要になり、支給が大幅に遅れる原因となります。提出前に記入漏れや添付書類の不足がないか、しっかり確認してから提出しましょう。

退職後の傷病手当金が受給できないケース

退職後の傷病手当金の継続給付には、いくつかの条件があることを解説してきました。しかし、条件を満たしているつもりでも、実際には受給できないケースが存在します。

「在職中は受給していたのに、退職後は不支給になった」「申請したけれど却下された」というケースは少なくありません。この章では、退職後の傷病手当金が受給できなくなる代表的なケースを解説します。事前に把握しておくことで、受給できないリスクを回避しましょう。

健康保険の加入期間が1年未満の場合

退職後の傷病手当金継続給付における最も基本的な条件が、健康保険の加入期間です。退職日までに、健康保険加入期間が1年未満だったり、待機期間を満たしていなかったりすると、退職後も受給する資格を得られません。

加入期間が1年未満のまま退職すると、退職後の支給は認められないということです。入社してまだ1年経っていない状態で病気やケガをして休職し、そのまま退職することになった場合は、退職後の傷病手当金は受給できません。

ただし、転職で健康保険が変わった場合でも、前の会社から現在の会社まで1日も空白なく健康保険に加入していれば、期間を通算することができます。転職の際に数日でも国民健康保険に加入していた期間があると、その時点で被保険者期間がリセットされてしまうので注意が必要です。

退職を考えている方で、現在の会社での健康保険加入期間が1年未満の場合は、まず自分の加入履歴を確認しましょう。前職からの通算が可能かどうかを健康保険組合や協会けんぽに問い合わせることをおすすめします。

退職日に出勤した場合

退職後の傷病手当金が受給できなくなる最も見落としやすいケースが、退職日の出勤です。「退職日に短時間でも出勤した」というケースでは、労務不能要件を満たせないため、継続給付の対象になりません。

この場合であっても挨拶を兼ねて退職日に出勤してしまうと、「労働不能」な状態ではないと判断されてしまい、「傷病手当金」を受け取れなくなる可能性がある。

退職日はお世話になった方々への挨拶や私物の整理などで出社したいと考える方も多いでしょう。しかし、たとえ短時間であっても出勤扱いになってしまうと、退職後の傷病手当金は一切受給できなくなります。

ここで重要なのは「出勤」と「出社」の違いです。私物を取りに行くために出社しても、出勤簿やタイムカード上で「出勤」として記録されなければ問題ありません。挨拶はメールや電話で行い、引き継ぎは退職日より前に終わらせておくことをおすすめします。

労務可能と判断された場合

退職後の傷病手当金は「在職期間からの継続給付」であるため、労務不能の状態が継続していることが絶対条件です。喪失後に受ける傷病手当金は、残りの期間があったとしても通算することができず、一度支給の対象外になると再度労務不能になっても再度の支給は受けることができません。

退職後に一度でも「働ける状態」と判断されると、たとえ支給期間が残っていても、その後の傷病手当金は受給できなくなります。退職した後に受給期間中にもかかわらず再び働いてしまうと、それ以降は「傷病手当金」をもらえない。

例えば、体調が少し回復してアルバイトを始めた場合、その後に再び体調を崩しても傷病手当金の受給は再開されません。これは在職中の傷病手当金とは大きく異なるルールです。

また、医師の指示に従わない、途中で通院をやめてしまうなど、正しい療養をしていないと判断された場合や、勤務先を退職後、転院をして空白期間ができた場合も不支給となるケースがあります。

退職後も療養を続ける場合は、定期的に通院し、医師から労務不能の証明を継続的に受けることが重要です。引っ越しなどで転院する場合は、診察に空白期間が生じないよう、計画的に医療機関を変更しましょう。

他の給付金と併給調整される場合

傷病手当金は、他の公的給付金と同時に受給する場合、「併給調整」により減額または不支給となるケースがあります。

病気やケガで休業しているにもかかわらず、「傷病手当金」がもらえない、あるいは減額となるのが、以下のような場合です。

  • 障害厚生年金か障害手当金を受けている
  • 老齢退職年金を受けている
  • 労災保険から休業補償給付を受けている
  • 出産手当金を受けている

特に退職後に注意が必要なのは、障害年金と老齢年金との関係です。

障害厚生年金との調整

同一の場合、同時に傷病手当金と障害年金を満額受け取ることはできません。傷病手当金と障害厚生年金は「併給調整」の対象となります。

障害年金は全額支給され、一方で傷病手当金は、障害年金との差額分の金額に併給調整されます。例えば、傷病手当金の日額が7,000円、障害年金の日額が5,000円の場合、傷病手当金は差額の2,000円のみが支給されます。

ただし、傷病手当金の日額より障害年金の日額の方が多い場合は、傷病手当金の日額が障害厚生年金より少ない場合、障害厚生年金が満額支給されて、傷病手当金は支給停止となります。

老齢年金との調整

退職後(資格喪失後)に引き続き傷病手当金を受給できる方が、老齢(退職)年金も受給できる場合は、傷病手当金は支給されません。ただし、傷病手当金の額が老齢(退職)年金の額よりも多いときは、老齢(退職)年金の額との差額が支給されます。

60歳以上で退職し、老齢年金を受給しながら傷病手当金も受給しようとする場合は、この調整に注意が必要です。

失業保険との関係

失業保険は、働く能力や意思があるにもかかわらず、仕事に就くことができない場合に支給されるものです。これに対して、傷病手当金は病気・ケガにより働くことができない方に支給されるものです。したがって、失業保険を受けられる方は、傷病手当金の受給対象にはなりません。

傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)は同時に受給することができません。傷病手当金を受給中の方は、ハローワークで失業保険の受給期間延長手続きを行い、療養が終わってから失業保険を受給する流れとなります。

退職後の傷病手当金と失業保険は同時にもらえる?

退職後の傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)は、どちらも生活を支える重要な給付金です。「両方もらえればありがたい」と考える方も多いでしょう。

結論から言うと、同時に受給することはできません。ただし、「順番に」受け取ることは可能です。傷病手当金を受給しながら療養し、回復後に失業保険に切り替えることで、両方の制度を活用できます。

この章では、傷病手当金と失業保険の関係と、スムーズに切り替えるための手続きについて解説します。

傷病手当金と失業保険の併給は原則不可

傷病手当金と失業保険が同時受給できない最大の理由は、それぞれの制度が前提とする「受給者の状態」が根本的に異なるためです。

傷病手当金の前提は、病気やケガにより働くことができない状態かつ療養に専念している人が対象です。一方、失業保険の前提は、働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない状態かつ積極的に求職活動を行っている人が対象です。

雇用保険の失業給付金の支給には、労働の意思・能力を有することを要求され、労務不能を支給要件とする傷病手当金と相反するためです。つまり、傷病手当金を受給している間は「働けない状態」とみなされ、失業保険が求める「働く意思と能力がある」状態とは矛盾します。

働ける状態であるにもかかわらず「働けない」と偽って両方を受け取った場合、不正受給とみなされ、受け取った金額の数倍を返還しなければならないなどの重いペナルティが課される可能性があります。

このように、傷病手当金と失業保険は同時受給できませんが、「順番に」受け取ることは可能です。具体的には、まず傷病手当金を受給し、その後に失業保険に切り替える流れになります。

失業保険の受給期間延長手続きをしておく

退職後も傷病手当金を受給しながら療養を続ける場合、失業保険の「受給期間延長」の手続きを必ず行ってください。この手続きを忘れると、回復後に失業保険を受け取れなくなる可能性があります。

失業給付の受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年間と限られており、通常離職してから1年を超えてしまうと雇用保険の給付が受けられなくなります。傷病手当金を通算1年6ヶ月受給した場合、そのままでは失業保険の受給期間を過ぎてしまいます。

受給期間中に病気、けが、出産等の理由により引き続き30日以上働くことができなくなった場合は、働ける状態になるまで雇用保険の受給を保留しておき、受給期間をその働くことのできなくなった日数分延長することができます。延長できる期間は、最長3年まで認められ、本来の受給期間の1年を含めると合計4年となります。

受給期間延長の申請方法

病気やけがで働くことができない場合(健康保険の傷病手当、労災保険の休業補償を受給中の場合を含む)は、離職の日(働くことができなくなった日)の翌日から30日過ぎてから早期に申請します。

申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 受給期間延長申請書
  • 離職票-2(受給手続き前の場合)または雇用保険受給資格者証(受給手続き後の場合)
  • 延長理由を証明する書類(医師の診断書など)

入院などで本人がハローワークへ行けない場合は、郵送または代理人(委任状が必要)による提出でも問題ありません。

失業保険には退職後1年間の有効期限があり、傷病手当金と同時にはもらえません。延長手続きをすることで、病状がよくなってから受給を開始できます。

回復後に失業保険へ切り替える流れ

病気やケガの症状が良くなり、働けるようになったら傷病手当から失業保険に切り替えます。切り替え手続きは働けるようになったタイミングが退職後30日より前か後かで変わります。

退職後29日以内に働けるようになった場合

必要書類を準備し、ハローワークに行くと失業保険を申請できます。一般的な失業保険の申請手順とほとんど変わりません。

手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 必要書類を準備する(離職票、マイナンバーカード、写真、印鑑など)
  2. ハローワークで求職の申し込みと失業保険の受給手続きを行う
  3. 雇用保険説明会に参加する
  4. 失業認定日にハローワークへ出向き、求職活動実績を報告する
  5. 失業保険が指定口座に振り込まれる

退職後30日以上経過してから働けるようになった場合

事前に受給期間延長の手続きを済ませている方は、以下の流れで失業保険に切り替えます。

病気やケガが回復し、働けるようになったら傷病手当金の受給を終了し、失業保険の受給延長を解除します。病気やケガで療養していた期間や、回復して就労可能となったことを示す証明書を準備しましょう。

手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 医師から「就労可能」の診断を受け、傷病手当金の受給を終了する
  2. ハローワークで受給期間延長の解除手続きを行う
  3. 求職の申し込みと失業保険の受給手続きを行う
  4. 7日間の待機期間を経て、失業保険の受給が開始される

病状が回復し、働ける状態になったら失業保険の受給期間延長を解除します。失業認定を受けると、7日間の待機期間ののちに失業保険の受給が開始されます。

なお、一般離職者の場合、通常は待機期間にくわえて3ヶ月の給付制限がありますが、傷病手当金を受給していた場合はすぐに失業保険を受け取れます。病気やケガを理由に退職した場合は「特定理由離職者」として認められる可能性があり、給付制限なしで失業保険を受給できるケースがあります。

まとめ:退職後の傷病手当金は条件を満たせば継続受給が可能

退職後の傷病手当金は、病気やケガで働けない期間の生活を支える重要なセーフティネットです。条件を正しく理解し、必要な手続きを漏れなく行うことで、安心して療養に専念できます。制度について不明な点がある場合は、加入していた健康保険組合や協会けんぽの窓口に相談してみてください。

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この記事を書いた人

木本旭洋のアバター 木本旭洋 株式会社イールドマーケティング代表取締役

株式会社イールドマーケティング代表。大手広告代理店でアカウントプランナー、スタートアップで広告部門のマネージャーを経験後、2022年に当社を創業。バックオフィス部門も統括。総務、労務にも精通している。

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